夢と現実がごちゃ混ぜになると大変です。『恋愛睡眠のすすめ』
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- ガエル・ガルシア・ベルナル,シャルロット・ゲンズブール,アラン・シャバ,ミュウ=ミュウ,ミシェル・ゴンドリー
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現実では決して起こらないであろうことに想像を巡らせるのは、なかなか楽しい時間の過ごし方である。たとえば音楽をかけながらフライパンで野菜を炒めているとき。曲がサビに入ることを合図に、フライパンに寝そべっていた野菜たちが一斉に起き上がりダンスを披露しはじめる......なんてことが起きたらチャーミングではないか!
誰しもの心に眠る想像力を形にする場があれば、おもしろいものが誕生するかもしれない。このような期待とともにDIY精神旺盛なミシェル・ゴンドリー監督がはじめたのは「ホームムービー・ファクトリー」というイベント。作ることの楽しさを存分に味わってもらうためにも、賞や評価基準などはあえて設けず、「セットを提供するから3時間で映画をつくってみよう!」という内容で、2008年から2019年までに17都市で催されてきた。今からでも参加できる機会があったとしたら、どんな映画をつくるだろう。
想像力を掻き立てるには、主催者であるゴンドリー監督の作品がやはり参考になる。『恋愛睡眠のすすめ』(2006年)では、ものづくりに熱心なステファン(ガエル・ガルシア・ベルナル)が主人公。自分と同じように創造力が豊かなステファニー(シャルロット・ゲンズブール)が隣に越してくると、ステファンはもう夢中。ところがファンタジー要素がたっぷり(上司をけむくじゃらにしてしまうカミソリロボットを含む)の夢を見るステファンは、次第に夢と現実の境目があやふやになり、ステファニーに対して奇妙な行動を起こすように......?!
遊び心のあるアイデアを形にしていると思わず没頭してしまうものだけど、現実との境目がわかる程度が望ましいかもしれない。
(文/鈴木未来)