もやもやレビュー

バケーション気分で鑑賞!?『胸騒ぎのシチリア』

胸騒ぎのシチリア [DVD]
『胸騒ぎのシチリア [DVD]』
ティルダ・スウィントン,レイフ・ファインズ,ダコタ・ジョンソン,マティアス・スーナールツ,ルカ・グァダニーノ
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飛行機でひとっ飛び...がなかなか叶わない今、映画を観ることは立派な擬似旅行体験。まずは空港に向かい、飛行機が来るのを待ち、今度は...なんて段取りを全部すっ飛ばして、再生ボタンのクリックで旅先にたどり着けるのは意外と悪くない。擬似旅行にぴったりの映画といえば『君の名前で僕を呼んで』でも知られるルカ・グァダニーノ監督の『胸騒ぎのシチリア』(2015年)。

画面いっぱいに広がるのは、キラキラと光る太陽がよく似合うシチリアの離島、パンテッレリーア。イタリアのシチリア島とアフリカはチュニジアのど真ん中に浮かぶこの火山島には、エメラルドグリーンに輝く湖、植物に囲まれたプール付きの豪邸、海が展望できるテラス...と日本ではなかなか味わえない景色が勢揃いで、頭のなかはいよいよ旅行気分。

一方でストーリーはなかなか大変。ロック歌手マリアン(ティルダ・スウィントン)は声帯を痛めて、物静かなドキュメンタリー監督の恋人ポール(マティアス・スーナールツ)と休養を兼ねてのバカンス中。そこに乱入してきたのは、おしゃべりが止まらないマリアンの元恋人ハリー(レイフ・ファインズ)とセクシーな娘、ペン(ダコタ・ジョンソン)。ハリーはマリアンに未練タラタラなのに、マリアンはポールとの宿泊先にハリーとペンを誘い入れてしまうので不思議。そんなこんなでペンを除く面々の関係はギクシャク、常夏の島で羽を伸ばしきれずにいる。マリアンとポールの仲はハリーの手により引き裂かれるのか?ペンがポールを略奪するのか?それともそれ以上に不幸な結末が待ち受けているのか......。

見ている側を終始ハラハラさせるストーリーではあるものの、私たちはあくまでも傍観者。パンテッレリーアの色鮮やかな景色にうっとりしながら心に余裕を持たせ、旅行気分もバッチリ味わうがよし。

(文/鈴木未来)

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