もやもやレビュー

もう無理!そんなときは『フランシス・ハ』

フランシス・ハ
『フランシス・ハ』
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長いこと仲良くしていた親友が何かをきっかけに途端に疎遠になる。やりがいのある仕事をしているつもりでも、銀行口座の残高を確認すると「お金が...ないぞ」となる。生きていれば、そんなこともあるかもしれません。時にはそんな状況にウンザリして、「こんなはずじゃなかったのに」と泣きたくなることもあるかもしれません。でも、いくら打ちのめされても泣かない女性がいます。『フランシス・ハ』(2013年)の主人公、フランシスです。

彼女は27歳、ダンサー。「ダンサー、アラ、かっこいい!」と思うかもしれませんが、実はまだ見習い。生活はカツカツ。そんなフランシス、しょっぱなから彼氏と別れ、ルームメイトである大親友には「ずっと狙っていたアパートがようやく空いたの。あの立派なところ」なんてことを理由に置いて行かれ、生活がかかっていたクリスマスのショーからも外されます。こちらまで悲しくなるくらいツイテいません。でも、彼女はめそめそしたりはしません。家がなくなれば大学での住み込みバイトに身を放り投げ、現役大学生に「卒業してもこんなことしてるの」と変な目で見られながらも、寮の一室で細々と暮らします。大の親友に置いてきぼりにされても、交流を求めて社交の場に顔を出します。そこではことごとく自虐ネタを放り込み「アハハ」と自分で笑い飛ばしたりもしますが、その姿はイタいというよりも愛くるしく、あなたも無意識のうちにフランシスを応援していることうけあいです。

物事がうまくいかないとき、ふとんにくるまって寝続けることであれば誰にでもできますが、フランシスのように、「今の自分には何ができるだろう」と考えて行動に出続ける力も備えておきたいところ。心がギブアップしそうなときは、何も考えずに『フランシス・ハ』。一歩前へと進む力がじわりじわりと湧いてくるかもしれません。

(文/鈴木未来)

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