近づいたらみんな死ぬ！ 斬新シチュエーションスリラー『（r）adius／ラディウス』

　2017年にカナダで制作された『（r）adius／ラディウス』。「radius」とは「半径」という意味で、半径15メートル以内に近づくと、人々が死んでいくという怪奇現象に見舞われた男を描いた異色シチュエーション・スリラーです。これまで「音を立てたら死」とか、「噛まれたら死」とか「見たら死」とかいうシチュエーション・スリラーはありましたが、「近づくと死」はあまりなかったので、興味をもって鑑賞。これがまた、とんでもない方向に話が進んでいく面白い一本でした。

　主人公は、交通事故に遭い、記憶喪失になってしまったリアム。彼は街に助けを求めに行きますが、そこでリアムが見たのは、目が白くなったたくさんの死体。「空気感染？」「なにかのウイルス？」と戸惑う中、リアムはやがて、自分がその原因であることに気づきます。リアムに半径15メートル近づいた人や動物はすべて一瞬で死んでしまう......そんな怪奇現象が発生する中、ジェーンと名乗るなぜか自分に近づいても死なない女性が登場。しかもリアムと同じく記憶喪失で...ふたりは力を合わせてこの怪奇現象の謎を解き明かそうと奮闘します。

　冒頭から本編３分の２あたりまで、SF的な要素も含まれ、謎が謎を呼ぶスロー展開が◎。B級感も溢れていることから軽く見られるのですが、物語の終盤でまさかの展開に！　終盤でリアムとジェーンの関係性が明らかになるのですが、この関係性が「半径15メートル以内に近づいたら死ぬ」とかいうシチュエーション抜きでもめちゃくちゃ衝撃的。最後はそのシチュエーションよりも、ふたりがどうなるのか、ハラハラ・ドキドキが止まりません。異色中の異色スリラーである一本。刺激がほしい一日にぴったり。

（文／トキエス）