もやもやレビュー

会計をしないで、店を後にしただけなのに。『サムシング・ワイルド』

サムシング・ワイルド [DVD]
『サムシング・ワイルド [DVD]』
メラニー・グリフィス,ジョナサン・デミ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

お酒は飲んでも1、2杯。周りからは「真面目だね、Aさん」といわれたりする。基本的にレールから外れることなく、人生を歩んできた。でも、たまにはハメを外したいんだ!一本くらいネジを飛ばしてみたいんだ!ハメを外したい理由は何であれ、そう思う瞬間が時折訪れるかもしれません。そうしてコンビニで買ってきたポップコーンをかばんに忍ばせて映画館でのおやつにしたり、自動販売機のお釣りの取り忘れを自分のものにしたりするのです。

『サムシング・ワイルド』(1986年)の主人公であるチャールズ・ドリッグス(ジェフ・ダニエルズ)もレールを外れない系男児です。仕事は銀行マン。来週には副社長になる予定。でも彼もときたま悪さをします。それは「ランチの会計を済ませないまま退店する」。

その光景をたまたまキュートなおかっぱ女性のルル(メラニー・グリフィン)が目撃してしまうことが、ことの発端です。彼女は「おーい、キミ。ランチ代、払わなかったでしょ?」と話しかけるや否や、「ま、いいわ。オフィスまで送ってあげる」で会話を締めくくり、ひょいひょいついてきたチャールズを車に乗せ、そのまま連れ去ってしまうのです。

「いやいや、まずい。午後には仕事に戻らないと、僕には家族も......ごにょごにょ」と言いながらも、車から飛び出したり逃げ出したりは決してしない彼。おかげでルルには襲われるし、実家に連れられ旦那だと紹介されるし......でも、待ち受けているのはそれ以上に恐ろしい展開。

とにかく、人生何があるかわからないので、たとえばコンビニで買ったおやつを映画館で食べていたところを「それ、映画館の売店で買ってないでしょ」と責め立てられたら、それがどんな美女であれ(あるいはイケメンであれ)、毅然たる態度でその場を立ち去るのが賢明だと、この映画を観て学びました。

(文/鈴木未来)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム