もやもやレビュー

底抜けの生きる力が欲しい貴方に『ミュリエルの結婚』

ミュリエルの結婚〈デジタル・リマスター版〉 [DVD]
『ミュリエルの結婚〈デジタル・リマスター版〉 [DVD]』
トニ・コレット,ビル・ハンター,レイチェル・グリフィス,ジャニー・ドライナン,ジニー・ネヴィンソン,ダニエル・ラパイン,マット・デイ,P・J・ホーガン
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ブライダル・サクセスストーリーというと、軽いタッチのラブコメを想像してしまうが、こちらの『ミュリエルの結婚』は、練りに練られた癖の強い脚本と、なかなかリアルにブスい主人公の、ズシンと重い内情が丁寧に描かれていく、力強い作品である。

ブスい、と書いたが、どう見てもパッとしない主人公ミュリエルを演じるトニ・コレットは2週間で20キロもの増量をして、この作品を演じているのだ。「食べて、食べて、食べ続けただけ」というが、当時22歳にしてかなりの役者魂。実際はかなりの美人なのだ。

この冴えないミュリエルは友達からも父親からも蔑まれるなか、ある旅行をきっかけに友人ができる。ここで、一発奮起してキレイになって彼氏ができて、という分かりやすい展開の映画もあるかと思うが、そううまく転ばないのが、この作品。せっかく仲良くなった友人に嘘を重ねたり、結婚することへの執着のあまり、どう見ても胡散くさい相手と結婚することに決めてしまう。偽りの友情、偽りの誓い......。ミュリエルが自分の誤った選択に気付くには相当の時間がかかるのだが、そこで初めて彼女の人生が色味を帯びてくる。

1994年のオーストラリア・フランスの合作であるこの映画、やはりトニ・コレットの<みにくいアヒルの子>ぶりに魅了される。若いうちから演技派だった彼女。近年はというと、スタジオA24作品の『ヘレディタリー 継承』(2018)で天才的な怪演を見せつけてくれた。こちらもまたの機会に紹介したいと思う。

(文/峰典子)

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