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俗悪か、それともエンタメか『容疑者、ホアキン・フェニックス』

容疑者、ホアキン・フェニックス(字幕版)
『容疑者、ホアキン・フェニックス(字幕版)』
ホアキン・フェニックス,アントニー・ラングドン,ケイリー・ペルロフ,ラリー・マクヘイル,ケイシー・アフレック,ジャック・ニコルソン,ブルース・ウィリス,ダニー・デヴィート,ベン・スティラー,ショーン・コムズ(ディディ),ジェイミー・フォックス,ビリー・クリスタル,ダニー・グローヴァー,ケイシー・アフレック
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『ジョーカー』でのオスカー受賞も記憶に新しいホアキン・フェニックスだが、かつて一度、引退を表明していたのをご存知だろうか。『グラディエーター』『ウォーク・ザ・ライン』で『アカデミー賞』候補に選ばれ、目覚ましい活躍を見せていたホアキン。2008年に、突然の俳優引退とラッパーへの転向を発表し、ファンを驚かせる。さらには、激太りや奇行から、ドラッグ依存なのでは? なんて声もあった。

『容疑者、ホアキン・フェニックス』は引退宣言から2年後に公開された作品で、監督は義弟でもあるケイシー・アフレック。髭を生やし贅肉を蓄えたホアキンの、俳優業に対する苦悩や、ラッパーへの果敢な挑戦ぶりが克明に記録されている。

のだが、実は引退も苦悩も全て嘘で、彼の悪趣味なジョークだったことが、公開と同時に自身により告白されている。なお、ホアキンはこの作品を製作するために、決まっていた全ての仕事をキャンセルし、巨額の自費を注ぎこんだというから、一世一代の大いたずらになったことは間違いない。どこまでが真意か測りかねるシーンもあり、もしかすると嘘の純度は100%でないのかもと、うっかり思わされる。このギリギリな匙加減は他の演者では真似できない芸当だろう。ちなみに下手なラップは、ちょっと可愛い。

(文/峰典子)

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