もやもやレビュー

サメ×アクションで更なる惨事に『シャーク・キラー』

シャーク・キラー(字幕版)
『シャーク・キラー(字幕版)』
デレック・テラー,エリカ・セラ,アーノルド・ヴォスルー,グラント・スワンビー,シェルドン・ウィルソン
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 ジャンルがサメというだけでも地雷の臭いがプンプンするのに、クライムアクションを無理やり継ぎ足して更なる惨事に進化させたのが本作だ。サメもアクションも何もかもが中途半端で乾いた笑いも出てこない。「五感を噛み砕く怒涛のシャーク・スラッシャー・アクション!」というキャッチコピーが空しく響く非常に残念な出来となっている。

 サメ退治のプロフェッショナル(どんなプロなのだろう?)である主人公が、ギャングの義兄に頼まれ巨大ダイヤを飲み込んだホオジロザメを仕留めるよう依頼を受ける。しかし、そのダイヤは義兄と対立する組織が密輸しようとしたもので、ガールフレンドを人質に取られ――という内容。
 サメと人間の激闘を描くシャーク・スラッシャー・アクションと銘打っている割に、サメは冒頭と最後にしか出てこない。しかも冒頭のサメは主人公によって瞬殺されている。88分間のほとんどはギャングの抗争に費やされている。ジャケットで前面にサメを押し出しておきながらこの内容は羊頭狗肉だが、ここまではサメ映画あるあるなので許容できる。
 義兄はサメをおびき寄せるため、主人公のガールフレンドをサメが泳いでいる海に足を刺して突き落とすし、主人公も特に葛藤なく兄を許す不思議。まともな人間が誰もいないという地獄。人物描写ができないのに何故サメ以外で尺を稼ごうとしたのだろう......。
 一事が万事この調子で、対立するボスは忘れた頃に出てくるなり主人公に銛で刺され死亡。次の瞬間にはダイヤを飲み込んだサメが現れ、主人公に滅多刺しにされご臨終。ご都合主義という言葉すら使用することをためらわれるレベルだ。激闘という言葉の意味が分からなくなる。

 唯一、本作に関係する美点を挙げるならば予告編は面白そうな雰囲気がごくわずかにあった。その少ない可能性に懸けて視聴したらバカを見た訳だが......。

(文/畑中雄也)

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