もやもやレビュー

ホラー顔したお下劣コメディ『ナイトウォッチメン』

ナイトウォッチメン(字幕版)
『ナイトウォッチメン(字幕版)』
ケン・アーノルド,ケヴィン・ジゲッツ,ジェームズ・レマー,ティファニー・シェピス,ミッシェル・アルティエリ
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 本作のジャンルはゾンパイアホラーなそうである。ゾンパイアって何だよと配給元の説明文を読むとゾンビのように増殖するバンパイアだという。全く要領を得ないので実際に視聴すると、出てくるのはどう見てもゾンビ。設定からして蛇足なので駄作の予感がビンビンのくせに存外面白い。B級映画としては視聴に耐えうる貴重な作品だ。

 ボンクラ警備員3人組と新人のバンドマン(ドラム)が真夜中にオフィスビルの監視をしていると、怪しい棺を搬入する宅配業者が。ビルで働く女性ジャーナリストが棺を開けると中からピエロの恰好をした吸血鬼が現れ、人々を襲い始める――という内容。あらすじだけ読むとホラーだが、本作はコメディである。
 ゾンビのような吸血鬼が溢れてもボンクラはボンクラで随分と緩い雰囲気。皆で吸血鬼を捕まえ、どうすれば倒せるか試行錯誤。吸血鬼は死ぬ際に屁のような悪臭を放つことも判明する。こういうバカな小ボケがちょいちょい入るので、ゾンビのような吸血鬼連中の出来が良い分だけクスリと笑える。バンドマンの武器はスティックで吸血鬼に刺さるのだからバカ映画である。ちなみにニンニクサンドイッチという、非常に胃に悪そうな食べ物も大活躍する。ついでに大麻を焚いて吸血鬼をハッピーな状態にもする。
 最終的に日光を浴びせれば吸血鬼を全員倒せるという結論に至り、主人公たちが自ら囮となり一カ所に集めるものの、日の出時刻を間違える大失態を犯す。あわやピンチの場面で吸血鬼に服を破られたバンドマンの背中に十字架のタトゥーがあったためゾンビが逃げ惑い、その間に朝日が昇って一網打尽。灰になるのかと思いきや派手に燃える謎の演出。

 テンポが良く、グロテスクな描写やゾンビの造形は上出来だ。その出来の良さとバカなネタのギャップが楽しく、続編が楽しみな作品となっている。もっとも2017年公開なのに現在まで続編は発表されていないが......。

(文/畑中雄也)

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