サメ映画のくせにハリウッド大作超え(中国で)『パニック・マーケット3D』
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- ゼイヴィア・サミュエル,シャーニ・ヴィンソン,ジュリアン・マクマホン,フィービー・トンキン,キンブル・レンドール
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サメの姿がジャケットに写っていればダボハゼ以上に食いつく奇特な連中が、興行として成立する程度には存在しているせいかサメ映画は9割9分9厘くらい視聴すると死にたい気分になる。本欄でも幾度となくそうした作品について触れた。
しかし本作は有象無象のサメ映画と違い、十分エンタメとして成立している。事実、中国では同時公開された『アバター』の興行収入を超えるヒットとなった。チープなB級映画でありながらも、テンポの良さや緊張と緩和を上手く取り入れた物語の組み立ては秀逸だ。何よりサメが十分に出てくる。
あらすじは、洪水でスーパーマーケットに13人が閉じ込められた。水中にはサメ、天井には人食いカニ、水上には高圧電流が垂れ下がるという危機的状況。しかも13人の中には強盗犯と殺人鬼が潜んでいる。生存者たちは命がけで脱出を図ろうとするが......という内容。
今までそれなりにサメ映画を紹介してきてちゃんとあらすじが日本語として成立できるくらい物語として成り立っていることに感動する。サメ映画とかワニ映画の圧倒的大多数は物語として成立させる意思も能力もないことを思うと素晴らしいと言える。
もっとも、カニについては1度出てきてその後は物語に絡まないし主な登場人物が13人もいるから描写が中途半端だし、ちゃんとした映画と比較すれば粗が目立つ。しかし、本作はサメ映画である。サメ映画を名乗ってサメが終盤まで出てこないという詐欺のような作品が平然と並ぶ世界で、サメが出てパニック映画として世に出ているだけでもすごいのだ。サメ映画を娯楽として視聴するには、出来の悪さを楽しむというひねくれた見方をせざるを得なかったのに、本作は素直に視聴してそのままで面白いと感じられる点で稀有だ。
まぁ、世の中には面白い作品は山ほど存在しているので、そこまでしてサメ映画を視聴しなければならない理由はないのだけども。
(文/畑中雄也)