もやもやレビュー

あふれだす異への愛『毛皮のエロス』

毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト [DVD]
『毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト [DVD]』
ギャガ
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不思議な後味を残す映画である。それに、ジャンルがわからない。恋愛、エロス、ホラー、サブカル、SF...。どの要素も少しずつ感じられるし、見るたびに印象が変わってくるのだ。

1958年、ダイアン・アーバス(ニコール・キッドマン)はヌーディスト村を訪れる。彼らと同様に全裸になり、撮影をするために。そのほんの三ヶ月前まで、ダイアンは写真家の夫の助手であり、従順でおとなしい、ふたりの娘の母であった。人前でヌードになるどころか、ひとりで行動を起こすなど考えられないタイプの人間だったのだ。

彼女を変えたのは、自宅兼スタジオの上の階に越してきた奇妙な男(ロバート・ダウニー・Jr)。彼はマスクで顔を隠し目と口だけを覗かせていた。ダイアンは謎めいた彼に心を奪われ、ポートレイトを撮りたいと男を訪ねる。

ダイアン・アーバスは実在の人物。小人や巨人、両性具有者、双子など、アウトサイダーな人々を撮影した写真表現で知られている。誰もが知っている「シャイニング」の双子は、実はキューブリックがダイアンの作品にオマージュした演出なのだ。

夫のアシスタントとして不自由ない生活から一変、過激な題材を追い続け、芸術の概念に一石を投じた天才写真家を描いたフィクション作品。官能的なシーンはほぼなく、エロスという題で、いささか損をしている気もする。レトロな50年代ファッションに身を包んだニコールは、完璧としか言い表せない美貌。インテリアや美術も印象深い作品である。

(文/峰典子)

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