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親切心は仇となるのか『ハードエイト』

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わずか8本の作品で世界三大映画祭の監督賞を制覇している、稀有な監督ポール・トーマス・アンダーソン。映画監督に憧れていた12歳の時、父にビデオカメラを買い当たえてもらい、ティーンエイジャーの頃には脚本を書いていたという。恐るべき新人が現れた、と話題になったデビュー作『ハードエイト』(1997)は、彼が26歳の作品である。

どこにでもありそうなダイナーの入り口に、不貞腐れた形相でしゃがみこむ男(ジョン)。そこに突如現れるのがスーツ姿の初老の男(シドニー)。母親の葬儀代を稼ぐためギャンブルに全財産を投げ込むも、全てすってしまったという身の上話を聞いたシドニーは、資金とノウハウを提供するから、もう一度カジノへ行かないかと誘うのである。初対面なのに不自然だ。当然、裏があるのではと勘繰るが、もの寂しさから誘いに乗っかるジョン。ここまでが序盤、話は2年後へ続く。

プロのギャンブラーになったジョンとシドニーはコンビを組んでいた。そこに二人の人間が現れる。カジノで働く女クレメンタインは、幸薄いツラ構えで、アイラインはいつも滲んでいる。そして、ジョンと飲み友達になる謎の男ジミー...。

シドニーがなぜジョンに尽くすのか、その親切心が解せないが、物語に伏線はなく、目的は後半で明かされる。シドニーを演じるのは、渋みを効かせた抜群の演技を見せてくれる、元軍人の俳優フィリップ・ベイカー・ホール。ジョンを演じるのは、ジョン・クリストファー・ライリー。二人とも、この作品をきっかけにポール・トーマス・アンダーソン作品の常連となる。この作品で軌跡を辿ってみるのも面白いだろう。

(文/峰典子)

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