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好事家以外にはセルフ拷問『発狂する唇』

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 酷い出来の映画という地雷を踏む度、小銭とはいえセルフ拷問に金を払ってしまったのかと自らの軽率さを恨みたくなる。日本映画製作者連盟によると、2018年の公開本数は邦画で613本、洋画は579本だった。千本以上も公開されているにも関わらず的確にロクでもない作品にぶち当たるのは、酷い作品が多いせいなのか運が悪いのか。
 本作は序盤こそホラーっぽい雰囲気を醸し出していたものの、ストーリーが進むに従って海外のゴミみたいなB級ホラーのパロディもどきの方向に進んでいく。もっとも、パロディは笑えるからこそパロディとして成立するのであり、本作を視聴した結果、乾いた笑いすら浮かばない内容だった。

 制作陣に対する罵倒と恨みつらみで100万字は書けそうだが、概要も分からないまま怨嗟の言葉を書き連ねても同意は得られないため、簡単にあらすじを記載する。
 女子中学生たちの首を切り落とすという連続殺人事件の容疑者となった兄が失踪し、無実を信じる妹の里美(三輪ひとみ)と姉、母は霊能力者に兄の行方と犯人捜しを依頼する。霊能力者は降霊の儀式を行うが、家族は儀式のために霊能力者の息子にレイプされ――。
 書いておきながら何だが、あらすじがあらすじとして成立していない。何で降霊にレイプが必要なのか、本作を視聴したところで永遠の謎だ。あと、何でか知らないけれどFBIも登場する。中盤からエログロナンセンス一直線のため、一貫性のある内容を書きようがない。おまけにオチはミサイルで街を破壊である。あらすじなんて書くだけ無駄だ。
 
 ネットで感想を調べたところ、思いのほか本作に対して好意的なコメントが散見された。世の中にはスカトロを好む人間がいるのだから、酷い映画で酷い目に遭うことが好きな人間がいたとしてもおかしくない。冒頭で年間千本以上が劇場公開されている件について触れたが、こういう酔狂な人々によって「誰が観て楽しむんだよ?」という映画が量産されているのだと察せられる。ちなみに、主演の三輪ひとみは本作で日本映画プロフェッショナル大賞・新人奨励賞を受賞している。ラジー賞のようなものかと思ったら存外マトモな賞だった。正気の沙汰とは思えない。

(文/畑中雄也)

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