もやもやレビュー

仕事を舐め切った人間の労働賛歌『東京PRウーマン』

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 働く女性が主人公のお仕事モノは数あれど、これほど働くということを舐めた映画は珍しい。予告では「21世紀のトレンディドラマ」と謳っているが、なるほど本作はバブル期の「取り合えず派手な雰囲気出しておけばいいだろう」という安直さに通じるものがある。
 何せ、地味な銀行OL(山本美月)が合コンで見栄を張って「PR会社に勤めています」と言い出し転職活動。面接はボロボロなのにヒールが折れたことが面白いと採用されるという荒唐無稽さ。いくら売り手市場でも、そんな理由で採用する企業は3日で倒産すると思う。

 入社すれば脳を使った形跡皆無な提案でクライアントの商売は繁盛するというのも噴飯ものだし、主人公の上司は終始不機嫌で浅い台詞しか言わない。挫折シーンはLiLiCoの表記をLiLiKoと間違えてキレられる程度。それで上司から「辞めろ!」と凄まれるのだから堪ったものではない。そしてショックで休むというのもメンタル豆腐過ぎる。
 傷心の主人公は仲良くなったイケメン社長の会社へアポなしで訪れると、そこには事業が失敗寸前で落ち込む姿。金持ちだと思ったら切羽詰まった人間と知り露骨にショックを受ける辺り、金目当てな雰囲気を隠しもしない。
 それでも社長のために、そこら辺の犬にでも仕事を任せた方がマシな企画立案でイケメン社長の会社が救われる雰囲気で幕を閉じる。何ら契約の話が出ていないのに、社員が勝手に赤字確定の仕事を取ってきて徹夜で残業とか、色々とデタラメ過ぎる。

 バブル期のお仕事もの作品だと「恋も仕事も(物語の10割が色恋)」という塩梅だが、本作は一応「恋より仕事」という体を取っている。それゆえ、上記のような狂人の妄想並みにイカれた雑な設定が苦しい。せっかく実在の会社の協力を得ているのにリアリティは皆無。これが取材をした上での「リアリティ」なら、この世にPR会社は不要である。もしかしたら83分という尺でそれを伝えることが本作の真の狙いではないだろうか......あまりの酷さにそんな考えが脳裏をよぎる。

(文/畑中雄也)

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