もやもやレビュー

設定を自ら覆すスタイル『シンデレラ・ゲーム』

シンデレラゲーム
『シンデレラゲーム』
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 2019年5月現在、NGT48の山口真帆さん暴行事件でアイドル冬の時代が加速化して氷河期に突入しているように見受けられる。そんな時にアイドル戦国時代に量産されたアイドル主演映画をセレクト。アイドル映画は「どうせ推しが出てればお前ら勝手に観るんだろ?」と視聴者をバカにしたような作品が溢れる中、本作は群を抜いていた。日本の治安が悪かったら販売元の会社は焼き討ち不可避である。

 所属するアイドルグループの解散公演を終え悲しむ主人公が目を覚ますとどこかの孤島にいた。周囲には同様に拉致されたアイドルたち。そこへ男が現れ、トーナメント制のカードバトルを勝ち抜けばトップアイドルになれるという。しかし、そのゲームは負ければ即死のデスゲームだった――。

 デスゲーム系の作品は理不尽なゲームを各人が特技を生かし、運営者を倒すというテンプレがある。そのテンプレをどう魅せるかがデスゲームを題材にした作品の価値なのに、本作はそのテンプレをダメな方向に打ち壊す。先にカードゲームと書いたが、要はじゃんけんと同じルール。一発勝負なので心理戦も何もなく、運のみで勝敗が決する。故に手に汗握る要素は皆無で、アイドルちゃんがバンバン死んでいく。

 決勝戦で主人公と残りのアイドルの勝負が始まろうとする瞬間、相手が何故か死亡。代わりに昨年の決勝で負けたアイドルが登場。お前、誰だよ。あと、お亡くなりになったアイドルちゃんは昨年の優勝者でした。

 ひたすら視聴者を置いてけぼりにしたゲームの行方は、主人公が「出せば無条件で勝利する」というアホみたいなカードを出して終了。鑑賞した77分は確実に人生の無駄遣い。

 訳が分からぬまま拉致されて殺し合いして、勝っても別にトップアイドルになれない。設定を自ら覆すスタイルに、感動の余り血の涙を流した。制作陣は何がしたかったのか。「俺が既成概念をブチ壊してやるぜ」とか中二病に罹患していなければ、犬猫が適当にキーボードを叩いて偶然できた脚本を使用した疑いさえある。

 本作が公開されたのは2016年。既にアイドルブームの終焉を感じる時代に制作されている。本作はアイドルたちに向けて「アイドルで頑張ったところで幸せになれないんだよ。さっさと寝ろ」というメッセージを込めていたとみるのは考えすぎだろうか。考えすぎどころか1時間強を全くの無駄にされて生まれた妄想でしかない。

(文/畑中雄也)

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