もやもやレビュー

奇跡がただただ胸に染み入る『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』

LION/ライオン ~25年目のただいま~ [DVD]
『LION/ライオン ~25年目のただいま~ [DVD]』
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今年もアカデミー賞の季節がやってきた。このレビューでも過去の受賞作について触れてみたいと思う。2017年度に6部門のノミネート、作品賞を獲得したのがこの作品『LION/ライオン〜25年目のただいま〜』である。

実際にあった出来事を元にした映画を見るたびに「事実は小説よりも奇なり」というフレーズが頭をちらつくのだが、この作品に起きた奇跡は破格レベルだと言っていい。神様に手を合わせたくなってしまう。

前半は主人公の幼少期を描く。1981年にインドの貧困街で生まれたサルーだが、5歳のとき、間違った電車に乗ったまま兄とはぐれ、1万キロも先の土地へ行ってしまう。そして数ヶ月もの間ひとりで生き延びる(それがもう奇跡)。警察も動くのだが、母親は文盲で新聞も読まないため、情報も届かない。最大の幸運だったのが、オーストラリア人夫妻の養子となって、約20年、すくすくと愛情たっぷりに育ったことである。

大人になったサルーを時代が味方した。母と兄に再び会うため、文明の利器Google Earthを使い、ひたすらに孤独で長い捜索がはじまる。当時はまだ幼かったため、覚えていることはほぼ無い。ひたすらマウスを滑らせ、子どもの頃の自分に想いを馳せる......。最後の最後、映画のタイトルの意味を知らされる時、胸にせまるものがある。ただ感動するだけでなく、社会情勢や貧困、養子縁組に至るまで、考えさせられることが多すぎる内容だった。

(文/峰典子)

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