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心の拠り所があるのっていいね『ブギーナイツ』

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映画好きならぜったいに知っているアカデミー賞。でもそのポルノ版はご存知だろうか。ポルノ業界屈指の業界誌「アダルト・ビデオ・ニュース」の頭文字をとって「AVNアワード」と呼ばれるものがそれ。100種類近くあるカテゴリーを見事勝ち取った者には、ふたりのカラダが絡み合うエロい銅像が贈られるエロい賞だ。1999年からはどうやら「ゲイVNアワード」も設けられているようで、アダルト界でもしっかりと毎年良作を洗い出しては盛り上がっているみたい。

そんなポルノ業界をときに気ままに、ときに残酷に描いている映画といえば、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ブギーナイツ』(1997)。ポルノというと卑猥な印象を抱いてしまうけれど、ダーク・ディグラー(ポルノ名)/エディ(マーク・ウォールバーグ)の栄光と衰退、そして彼を取り巻くポルノ界の仲間を描く『ブギーナイツ』に映し出されるポルノのコミュニティは、かなりほんわかしている。(もちろんコーヒー代わりにコカインを吸い、デスクワークの代わりにセックスをするけれど)ポルノ業界の聖地、サンフェルナンド・バレーの近くで育ったアンダーソン監督が「ポルノ業界は悪い人ばかりじゃない、というのを描きたかった」と語っていたからにはなるほど納得の描写。

そんな中、その生活から生じる各々の不自由が徐々に明かされていく。たとえばポルノ界に手を染めているから自分の子供に会うことができないアンバー(ジュリアン・ムーア)。夢のステレオショップを開けるにもローンが借りられないバック(ドン・チードル)。家族に幻滅してポルノ業界に足を踏み入れたエディ。でも最終的に彼らは、血縁を手放してでもポルノ業界を居場所とし、はたまたポルノ業界の力を借りて夢を叶えることとなる。

「ポルノ業界以外に行き場がないから」と言ってしまえばそれまでだけれど、どん底に落ちたときに自分を迎え入れてくれる場所があるだけでも、想像以上に救われるものなのかも。と、まさかのポルノ業界にちょっぴりほっこりできちゃう映画です。

(文/鈴木未来)

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