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あなたは心の痛みにどう寄り添うか『FRANK フランク』

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仕事はサラリーマン。音楽家になりたいけれど、並外れた才能もないし、14人のフォロワーに向けて「一日中音楽作りに熱中!さて食べる時間 #ムシャムシャ」なんてツイッターにつぶやいちゃう超平凡でちょっぴりイタイ男子が『FRANK フランク』(2014)の主人公。名前はジョン(ドーナル・グリーソン)。ところがある日、彼はあるバンドのキーボディストの自殺未遂現場に居合わせたおかげで、そのバンドのキーボディストに抜擢される。そこから彼は、大きなキャラクターのかぶりものを一切頭から外さないヴォーカルのフランク(マイケル・ファスベンダー)率いるバンドのアルバム制作のため、個性溢れるバンドメンバーたちと森のキャビンに引きこもることに。次第に彼らはスターへの道を歩み始めるが、フランクの精神状態は徐々に乱れていき、それまでは謎に包まれていたフランクの真の姿が見えてくる......。

シュールなコメディ調で描かれてはいるものの、登場人物の人間模様はなんだかぎこちなく、空虚感がにじみ出る。だってアルバム制作中にあれだけ時間を共にしたというのに、ジョンとバンドの仲が特別深まる様子が見られない。というのも、ジョンは有名になることに夢中なだけで、フランクの心の病にひとり、気づけずにいたからだと思う。でも、あまりにも心の痛みと無縁だと、周りが負う傷に気付いてあげることも、ましてや理解してあげることも難しいのかもしれない。自分は周りが傷ついたときに、うまく寄り添えているかな、とふと考えさせられた。

ストーリー自体は実話に基づいてはいないけれど、じつはこの映画、同じかぶりものをしていたイギリスの音楽コメディアン、フランク・サイドボトムのルックスを借りている。さらには実際に彼のバンドでキーボディストを務めたジョン・ロンソンが脚本を手掛けているのだとか。本物のフランクはカルト的栄光を浴びたものの、その人気は次第に薄れ、彼はいつの間にか「ピングー」のアニメーターになっていたらしい。その後2010年にガンで永眠されたが、英ティンパリーで銅像として存在し続けている。ぜひイギリス旅行に出掛ける前に観て欲しい映画である。

(文/鈴木未来)

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