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"記憶違い"で人間関係はドロドロに。『サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶』

サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶 [DVD]
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 過去の思い出話をしているとき、自分の話す内容と相手の記憶している内容に差異を感じたことはありませんか? 自分にとっては大したことがなくても、もしかすると相手に大きな誤解を与えていたり、逆に自分が相手を誤解しているかも。スリラー映画『サスペクツ・ダイアリー すり替えられた記憶』では、冒頭に「世の中をどう解釈するかは、過去をどう記憶しているかで変わる」というメッセージがスクリーンに映し出され、人間関係において、いかに記憶が大切かを気づかせてくれます。

 主人公は虐待の過去を赤裸々に綴った書籍でヒットをかました作家、スティーヴン・エリオット(ジェームズ・フランコ)。彼の書籍の中では父親はすでに亡くなっているはずなのに、朗読会の日、突如父親が姿を現します。そのことがきっかけでスティーヴンは信用を失い、これまでの書籍の契約もパーに。そんな中、彼は妻殺害の容疑で逮捕されたIT界の大物ハンス・ライザーの事件に興味を持ち、裁判を傍聴することに。

 スティーヴンは、自傷行為が好きでドラッグがやめられない作家。闇を抱えているスティーヴンが記憶している壮絶な過去と、周りの話が中盤らへんからちょくちょく噛み合わないのです。例えば、スティーブンが昔、激励のために親友からもらったコインを見つけ、本人に返しに行くシーン。そこではその親友は「これはお前に盗まれたものだ」と激怒するのです。180度違うお互いの記憶を描いたこのなんでもないシーン。記憶が曖昧、というよりも「記憶」というものは自分の都合のいいように創り出してしまうのかなと、かなり鳥肌が立ちました。また、本編が進むにつれ、スティーブンの過去、父親との関係などが明らかに。真実を知ったときには、さらに記憶の差異に対して恐怖を覚えてしまうことでしょう。

 ちなみに原作と映画では結末が違うようで、原作の自叙伝を綴ったスティーヴン・エリオットは本作に対してかなり批判的なのだとか。他にも「記憶の差異」といえば、セクハラで訴えられたジェームズ・フランコと、訴えた女子たちの話に相違があることも余計ながら思い出してしまいました。「記憶の相違」は映画だからオーバーに描かれている、というわけではなく、実際に私たちの生活の中にたくさんあふれているものなんだな、と思うと本当怖いですね。自分の記憶を過信するな、です。


(文/トキエス)

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