もやもやレビュー

80分一本勝負『おとなのけんか』

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日本では昔から、夫婦げんかは犬も食わぬ、という。雑食の犬でさえ取り合わないくらい、バカバカしいものばかりで、他人が口出しするものじゃない。対して欧米には「コップの中の嵐」という言葉がある。限られた範囲内で起きたまわりに影響のないもめごとのことである。内輪揉め、というやつか。

まさに、コップの中で開催された夫婦たちの喧嘩を、巨匠・ロマン・ポランスキーが面白おかしく描いたのが『おとなのけんか』である。 アカデミー賞女優、ジョディ・フォスター&ケイト・ウィンスレットが妻を。ジョン・C・ライリー、クリストフ・ヴァルツがそれぞれの夫役を演じる。

発端は、11歳のこどもたちの喧嘩と怪我である。大人同士でおだやかーに、なごやかーに解決しようと、二組の夫婦が顔を合わせる。舞台はロングストリート夫妻(ジョディ/ジョン)の自宅で、最初は四人とも微笑んでいる。ケガをさせた子の両親は謝罪し、させられた子の両親はそれを受け入れたかのように見える。

しかし、ほんのちょっとの話の歪みから「やべー」空気になってくる。口を滑らし、声を荒げ、野次を飛ばし、日ごろの鬱憤が口をついて出る。親同士の対決かと思いきや、矛先は夫婦間にも及ぶ。上っ面はボロボロ剥がれおちて、本性が剥き出しになってくる。ほぼ全編にわたり口広げられる始末の悪い喧嘩である。

戯曲をもとにした映画だという。演技に定評のあるベテラン陣による、ウィットに富んだセリフの数々が、目の前で舞台を見るよう。原題は「CANAGE」=虐殺。なんでこうも面白いのか。抱腹絶倒。

(文/峰典子)

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