もやもやレビュー

25年という時間が育てたもの『ドライビング Miss デイジー』

ドライビング Miss デイジー [DVD]
『ドライビング Miss デイジー [DVD]』
KADOKAWA / 角川書店
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ジェシカ・タンディ演じる主人公デイジーは凛とした老婦である。シワのないワンピースを着て、手製ピクルスを瓶に詰め、週に1度は寺院に通い、夫の墓前に花を植え育てている。あるとき愛車で事故を起こし、離れ暮らす息子が運転手を雇うことに(勝手に)決めてしまう。運転手としてやってきたのが、もう一人の主人公、モーガン・フリーマン演じるホーク。物語は25年にも及ぶ、この二人の交流を描く至極シンプルなストーリーで始まり、そして終わる。

年をとって頑固になっているデイジーであるから、他人が入り込む隙間がなく、事はそううまく運ばない。一方、ホークは無学でありながらも、真面目で明るくソツがない。長い時間をかけながらも、互いを信頼し友情を刻んでいく...。抑揚のない地味な話に感じるが、その舞台は1950年代のアメリカ南部で、黒人差別が根強い時代。さりげなくホークのセリフの中に盛り込まれた人種差別批判や社会批判に、胸がチクリと痛みを覚える。一方、ぴりりと嫌味を言うデイジーにクスリと笑わせられる。"心温まる映画"という枠に収まらない、もっと大きなものに包み込まれるような気分になる。

それにしてもジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンの年老いた演技が、非の打ち所なく素晴らしい。お互いが押し付けあうことなく、食ってしまうこともなく、絶妙なバランス感覚でふたり芝居に興じているから、派手なシーンなどなくとも画面から目が離せない。公開された1989年のアカデミー賞主演女優賞をジェシカは受賞。80歳の受賞は同賞の最高年齢である。それだけでなくアカデミー賞とゴールデングローブ賞の作品賞も獲得しており、紛れもない名作。10年前は見ようとしなかっただろうし、5年前では飽きていたかもしれない。大人になると気付けるモチーフがじわじわと押し寄せる。10年後には一体どう感じるのだろうか。

(文/峰典子)

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