もやもやレビュー

無知があぶり出す食料輸出大国の実情『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

パパ、遺伝子組み換えってなあに?(字幕版)
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 2020年に食品表示法が改正される。本業が加工品の製造販売なので資料を取り寄せると表示方法の細かさに驚かされる。アレルギーなど生命に関わる可能性のある表示は当然だが栄養成分の表示まで義務化される。カロリー表示を義務付けて皆さん意識されるのだろうかと不思議に思う。

 ところが本作の舞台となるアメリカでは遺伝子組み換え食品に表示義務はない。日本では考えられないことだが、向こうではそうなのだ。
 環境活動家でもあるジェレミー・セイファート監督が、子供を授かったことをきっかけに食の安全について調べた際に出会った遺伝子組み換え作物で、その安全性について組み換え作物のシェア90%のモンサントや遺伝子組み換え作物が与える影響を研究する大学教授などに取材していく。

 日本で食品問題に少しでも関心があれば知っている話が大半なので、関心ある人にとって目新しい発見はない。監督が遺伝子組み換えについて一切知識がないという設定のせいだろう。モンサントが自社の作物を使用する零細農家を奴隷のように搾取するなんて話は随分昔に問題視されている。この映画の公開は2015年で「いつの話をしているのか?」と白けてしまう。
 むしろ主なターゲットであるアメリカに住む人々は遺伝子組み換えについて酷く無知なのだと想像できる。監督の子供が遺伝子組み換え食品を食べながら「ただちに問題はない」と言う場面は苦笑いするよりない。どういう影響を及ぼすのかまだデータがそろっていないことが問題なのだ。問題を問題だと思わせないほどロビー活動と情報のコントロールがなされている状況には背筋が凍る。
 
 農産物の輸出大国がこんな塩梅なので、輸入に頼っている我が国の食品表示が詳細になるのは健全なことなのだろう。いつまで対岸の火事として眺めていられるのか分からないが......。
(文/畑中雄也)

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