もやもやレビュー

JDとイケメン社長の身の丈に合わない変態物語『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

フィフティ・シェイズ・ダーカー (字幕版)
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 本作はステファニー・メイヤーの『トワイライト』シリーズのファンフィクションが原作だ。ざっくり言えば10代女性向けラノベの二次創作が元ネタである。元はネット小説であるが世界で1億2千万部以上売れているのだから「映画版も面白いんだろうなぁ」と手に取ったのが不味かった。
 あらすじは女子大生と若いイケメン経営者が恋に落ちるというもの。が、イケメン経営者はサディストでノーマルの女子大生と経営者は葛藤する。女子大生が彼の望むプレイをしてほしいと頼み、それに応えると女子大生はドン引きして別れを告げる――。これ以上書くのが馬鹿馬鹿しいので詳細はWikipediaでも参考にしてほしい。

 まずSMが話の核となっているのにヌルい。ベルトで数発尻を叩いて心折れる時点で女子大生はSMの嗜好は皆無だし、それを見抜けない男はSとして振舞う資格がないだろう。到底不向きな人間をパートナーにしてしまう辺り「有能な経営者」という設定が破綻している。有能な人間が不向きなパートナーを選ぶだろうか。仮に選んだとしても、そういう相手に自らの嗜好を明らかにしないだろう。
 女も尻を叩かれたくらいでワンワンと泣くなら「本気のプレイを見たい」という世迷言を吐くべきではない。いきなりのカミングアウトならともかく、自宅にSM用の部屋がある人間なのだから相手はガチだと想像つくだろう。
 つまり、主人公の男女は相手を見る目もなければ想像力も欠如したアタマが足りない連中だと推測できる。己の身の丈を知らないバカ2人の色恋など、どんな心境で眺めればいいというのか。

 原作が素人の手慰みだとしても、そんなもので映画を作る時点で金をドブに捨てるようなものだ。原作がどういう訳かヒットしたから映画も作っちゃったのだろうか。どの国にも浅はかな人間はいるものだと呆れてしまう。
 余談だが本作は公開された2015年に最低の映画を選ぶゴールデンラズベリー賞で最低作品賞や最低脚本賞など5部門を獲得している。当たり前だよなぁ。しかし続編が2017年と2018年に公開されるという。観客はドMばかりなのだろうか。なかなか高度なプレイである。

(文/畑中雄也)

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