もやもやレビュー

お客様ファーストではなく、自分ファーストが『クラークス』流。

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私の初アメリカ・アウトレット体験は、たしかハワイだった。そのとき、私は日本の接客業における細かい気配りに、改めて気づかされたのを覚えている。まず、整理整頓具合。服はグチャッと積み上げられ、畳まれる気配なし。続いて、店員の不在具合。試しに呼んでみても、返事がない。レジも無人。もはや「この店営業してるの!?」状態。いずれにしても、「お客様は神様」なんて概念が存在する日本では、なかなか見ない光景である。

ユニクロが海外進出をしたとき、「お客様は神様」の概念は、海を渡った。2009年にオープンした「パリ オペラ店」にて、スタッフはレジに並ぶ人たちに"Merci de votre attente(お待たせしました)"と言うようトレーニングされたのだ。それにしても、「お客様は神様」というアイディアをトレーニングしなきゃいけない時点で、やはり日本と海外では接客に対する意識がちがうようだ。

オタク監督として知られるケヴィン・スミスを一躍有名にしたインディ映画『クラークス』を観ていたら、アメリカと日本の接客文化のちがいが、再び頭をよぎった。

コンビニで働くダンテ(ブライアン・オハローラン)、レンタルビデオ屋で働くランダル(ジェフ・アンダーソン)、そして彼らを取り巻く人たちの一日を描いた本作品は、日本もユニクロも関与していないので、ふたりは各々の店でやりたい放題。床に座って卵を割り続けるお客さんを眺めたり、店を閉めて屋上でホッケーをしたり、4歳児にタバコを売ったり...もはや閉店してもおかしくないレベル。

接客なんてそっちのけで繰り広げられるのは、ごくごく普通の会話。セックス、恋愛、スター・ウォーズ、人生...これが、友達の会話を聞いているようでスーッと入ってくる。そしてダンテは一日の出来事を通して、接客どころか自分の人生と向き合うことに...。おバカな映画に見えて、意外と思慮深い。代わり映えのない毎日を打破したい人には、ちょっとしたヒントが隠れている一本である。

ところで、ダンテとランダルはふざけすぎかもしれないけど、日本はもう少し気を抜いてもいいんじゃないでしょうか。『クラークス』の気の抜き方は、適度に見習いたいところです。

(文/鈴木未来)

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