もやもやレビュー

音楽が元気をくれる『はじまりのうた』

はじまりのうた BEGIN AGAIN [Blu-ray]
『はじまりのうた BEGIN AGAIN [Blu-ray]』
ポニーキャニオン
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

第60回グラミー賞で、ブルーノ・マーズが6部門を受賞した。ということは、受賞発表とトロフィー授与のたびにスピーチをするのだけれど、とりわけ「最優秀アルバム賞」を受け取った時のスピーチがよかった。

両親も親戚もミュージシャンという家系に産まれ、子どもの頃からプレスリーのモノマネ歌手として活躍していたブルーノ。「その頃に見ていたのは、これまで会ったことのない人同士が、たとえ地球の反対側から来ていたとしても、その瞬間だけ一緒に踊ったり乾杯をしたりする姿。このアルバムを通じて、みんながまた一緒に踊っている姿を見たかった」と語っていた。

音楽は、人と人をつなげたり、鼓舞したり、寄り添う力を持っている。コンセプトや意味をしつこく感じ取る努力はいらない。ただ、意図もせず向こう側からふわっとやってきて、何かを残して去って行ってくれることがある。そしてそれが目に見えぬ形で心に残る。

音楽がつなぐ縁を映画にしたら右に出るものはいないのが、ジョン・カーニー監督である。『ONCE ダブリンの街角で』では、アイルランドを舞台にストリートミュージシャンとチェコ移民女性が心を通わせていくラブストーリーを描いた。当初全米2館だった公開を口コミで140館までに伸ばし異例のヒット。アカデミー賞歌曲賞受賞となった。

出会い、交流、音楽というスタイルで、再び長編を撮ったのが2013年公開の『はじまりのうた』。ニューヨークを舞台に、落ちぶれた音楽プロデューサーとシンガーソングライターの交流を描く。これまた当初は全米でたった5館の公開だったのが、あれよあれよと評判を呼び1300館まで増えたヒット作。恋愛の要素は控えめに、どちらかというと音楽や家族、人生の側面が色濃い一本だと思う。一人はもちろん、家族や恋人、友人と、相手を選ばずに楽しめる良作。元気になる。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム