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最も純粋なラブストーリー『ラビング 愛という名前のふたり』

『ラビング 愛という名前のふたり』は、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開中

この映画、「コリン・ファーストが映画化を熱望した感動の実話」という宣伝を聞いたときから気になっていた。
黒人女性ミルドレッド(ルース・ネッガ)と白人男性リチャード(ジョエル・エドガートン)が恋愛し、結婚する。現代ではごく普通とも思えるこの結婚という行為を「異人種間の結婚は法律で禁止する」とされていた時代があったのだ。この法律と戦った夫婦の物語。

リチャードはレンガ職人で口数も少ない男性だ。ミルドレッドは思わぬ妊娠を恐る恐るリチャードへと伝える。どんなに愛し合っている相手であったとしても、女性にとっては相手の反応が気になる瞬間だ。この時にみせるはにかんだ笑顔に、みているこちらまで「喜んでもらえてよかった」と冒頭3分でもう涙。冒頭から泣ける映画は珍しい。

リチャードは誰にでも心をゆるすようなタイプの男性ではないが、大切な人は全力で守りきる。家族をいつも第一に大切に思い、家族の為に行動する姿に胸打たれる。ミルドレッドが何か相談したときの「決断力」と、それが行動に移されるまでの「瞬発力」がとても魅力的。少しの沈黙の後にかえってくる男気あふれる言葉は、現代男性にはみならってほしいくらいだ!

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黒人女性ミルドレッドを演じるルース・ネッガと、白人男性リチャードを演じるジョエル・エドガートン。

二人の結婚生活は見つかるたびに罪にとわれ、裁判を何度も戦うことになる。その期間は10年以上にもおよぶが、ついにアメリカの法律を変える日がやってくる。
ミルドレッドという女性は自分が黒人であるがために許されないこの結婚に対して弱音を吐かずたたかい続ける。その姿はとても力強い。
この強さは愛してくれる人の存在がとても大きいのだろう。愛というみえないものの偉大なパワーを感じることが出来る作品だ。
男性が観ても女性が観ても違う視点で過去にあった真実と向き合える最も純粋なラブストリーである。
(文/杉本結)

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『ラビング 愛という名前のふたり』
3月3日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー

監督:ジェフ・ニコルズ
出演:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニック・クロール、テリー・アブニー ほか
配給:ギャガ

原題:Loving
2016/イギリス・アメリカ合作/122分
公式サイト:http://gaga.ne.jp/loving/
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