とっさの嘘は、一種の才能である。『なんちゃって家族』

　『モンスター上司』のジェイソン・サダイキスと、ジェニファー・アニンストンが主演のコメディ『なんちゃって家族』。『ハングオーバー』のスタッフが制作を担当し、アメリカでは大ヒットした本作は、まさにギリギリアウトなブラックジョークが満載です。

　麻薬の密売人デヴィッド（ジェイソン・サイダキス）は、同じアパートの青年を助けたことからヤンキーたちにマリファナと金を奪われてしまう。大事な商売道具を奪われてしまい窮地に立たされたデヴィッドは、ボスからメキシコへの密輸仕事を命令されてしまいます。どうやって国境を越えようか考えていたとき、あるキャンピングカーがデヴィッドの目の前に。偽りの家族を作り、キャンピングカーで密輸することを思いついたデヴィッドは、元ストリッパーのローズ（ジェニファー・アニンストン）、童貞の青年ケニー、万引き常習犯でホームレスのケイシーに声をかけ、メキシコへ向かいます。

　"感動のロードムービー"という作品は数あれど、ここまで"爆笑できるロードムービー"はそうそうありません。なかでも、道中で出会った人（警官を含む）たちにとっさにつく嘘が見事！

　例えば、マリファナを布で包んで隠し、まるで赤ちゃんのように抱いていたローズは、出会った夫婦に「だっこさせて」と強引に要求されてしまいます。拒むローズと無理矢理な夫婦......その弾みでマリファナは道路に放り出されてしまい、トラックで轢かれてしまうのです。「なんで血がでてないの？」とパニック状態の夫婦に対し、これは親の気持ちを体験してみようという学校の課題で、赤ちゃんは偽物だととっさに切り返すケイシー。そんなのすぐに思いつかんだろう......という、実は頭の回転のはやい賢い連中が集まった見事なニセ家族なのです。

　たくさんの嘘とジョークがつまった本作は、悪知恵と下ネタが詰まりすぎてのR15指定なのでしょう。本作を観ながら、あなたもとっさの嘘トレーニングをしてみてはいかがでしょうか。いい頭の運動にもなりますよ。

（文／トキエス）