もやもやレビュー

理想の男性像なんて持たない方がいい。『フレンチアルプスで起きたこと』

フレンチアルプスで起きたこと [DVD]
『フレンチアルプスで起きたこと [DVD]』
ヨハネス・バー・クンケ(トマス)/リサ・ロブン・コングスリ(エバ)/クララ&ヴィンセント・ヴェッテルグレン(ヴェラ&ハリー),リューベン・オストルンド
オデッサ・エンタテインメント
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 まだまだ残暑が厳しい今日この頃ですが、季節外れの映画でも観て視覚だけでも涼しさを取り入れてみませんか?

 カンヌ国際映画祭をはじめ世界各国の映画祭で絶賛された『フレンチアルプスで起きたこと』。ハリウッド・リメイクも決定しているスウェーデン映画です(日本公開2015年7月)。

 舞台はフランスの高級リゾート。5日間のスキー・バカンスにやって来たスウェーデン人の4人家族が、思わぬアクシデントに見舞われます。

 スキーを楽しんだ後、テラスで昼食をとっている最中のこと。スキー場の安全確保のため、人工的に起こしている雪崩を来場者が皆、面白がって写真を撮ったりしている時、妻エバが異変に気付きます。予想をはるかに上回る大きな雪崩が、テラスめがけて勢いよく向かってきたのです。

 幸い大事には至らず、一家も他のスキー客も皆無事でした。が、雪崩の瞬間、夫トマスがとった、自分だけ我先に逃げるという、家族にとってありえない行動のせいで、家族の空気がぎくしゃくし始めます。

 妻は夫に失望し、子供たちもパパに対して反抗的な態度をみせます。挙句の果てにトマスは、逆切れどころか開き直って自分の性格が自分でも嫌いだと、まるで3歳児のように所かまわず泣きじゃくるのです。それを見て困り果てる妻に、訳が分かっているのかいないのかパパを慰める子供たち...。
この後トマスが理想の夫、理想のパパという名誉を挽回するチャンスがあるのが、せめてもの救いです...。

 男子の「俺についてこい!」や「君を守る!」というセリフは、話し半分で聞くくらいがちょうどいい。自分のことは自分でなんとかすると思っていれば、夫や彼氏がいざという時頼りがいがなかったと気づいてもがっかりしないで済むし、どんなにか賢明だと思うのです。
 夫や彼氏や男性に理想を描いている女子に、頭でっかちになる前に観てもらいたい作品です。

(文/森山梓)

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