もやもやレビュー

女工哀歌よりなお酷い現代の「女工」たち。『名前のない女たち』

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昔関わった仕事で、AV女優(今日ではセクシー女優と書いたほうがいいのだけど)が撮影を土壇場で逃げ出しそのまま行方知れずというハプニングがたまにあった。あとはスチール撮影の最中「コケッコー」と奇声を発しながら駆け出し、そのまま音信不通とか。

アダルト関係のランクは専属、単体、キカタン(企画単体女優)、企画女優に分類される。待遇は天地ほど差があり、専属を女王とすれば、企画女優は貧農だろうか。

当然、扱いも異なり専属はスタッフから蝶よ花よと持ち上げられる。一方、企画女優は路傍の石か何かというほど雑に扱われる。それはギャラにも反映されるが、一部の売れっ子を除けば体を売っても二束三文にしかならない。

下手すると単純作業のアルバイトの方が稼げるだろう。映画上映が2010年とあるので、当時より環境は酷くなったと思われる。上昇する要因がないのだから仕方がない。おそらく今日、十人並みの容姿やスタイルではAVにしろ性風俗にしろ射精産業から門前払いされることだろう。

おまけにネットが普及した影響で、劇中での主人公の性行為の価値は1本数万円で会社バレ(会社にバレるの意)、親バレとさまざまなリスクが付いて回る。契約終了後も延々と世界に発信されていく。それでも応募者数は増加しているという不思議。

会社バレや先輩の自殺を経て、AV女優としての自分とオーバーグラウンドにいる自分が結びつき自我が統一されて、かなり無理矢理なハッピーエンドに落とし込んでいる本作。現実があまりに陰惨ゆえの配慮か。

(文/畑中雄也)

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