飲む前に観る！　ウコンと一緒にぜひ！　『フライト』

　食欲の秋、お酒の秋！　でも、飲み過ぎには気をつけて！　どうしても飲み過ぎちゃう人は、『フライト』を観ましょう。

　ベテランパイロットのウィトカー（デンゼル・ワシントン）は、いつもと変わらずその日も、フロリダ州オーランド発アトランタ行きの旅客機を操縦していました。ところが、機体が原因不明の急降下。咄嗟の判断で行った背面飛行が功を奏しますが、102人中乗客4人、客室乗務員2人が死亡します。ウィトカー自身は比較的軽症で済んだものの、事故の当事者としてマスコミに追われてしまう上、精神的ショックも負っていました。

　物語はこの不幸な事故を描いているようで、違う方向に転がっていきます。多くの命を救った英雄のようにも思われたウィトカーが、実はアル中あったのです（さらにドラッグまで...）。事故の前日も飲酒をしていたし、事故当日のフライト中もオレンジジュースにウォッカを混ぜて飲酒していたのです。

　ウィトカーの実態は本当にひどいものでした。
　事故のあと、「もう飲むな」と説得されたパイロット組合の代表で友人のチャーリーと、敏腕弁護士ヒューを裏切って酒浸りになるわ。生き残った客室乗務員のマーガレットに、酒は飲んでいなかったと証言してほしいと頼むわ。さらに酔った勢いで別れた妻子に会いに行き、妻に警察に通報されてしまいます。

　事故が機体トラブルによるもので、彼のせいではなかったとしても。どんなにすごい技術を持っていて、彼の操縦でなければさらに多くの人が亡くなっていたかも知れないとしても。飲酒運転となれば英雄もクソもなく、今まで積み上げてきたキャリアも才能も、すべて台無しになってしまいます。

　お酒の楽しみ方・飲み方を間違えることの恐ろしさが、ここには描かれています。美味しいご飯と一緒にお酒が進むこの時期、飲みすぎには気をつけよ......と肝に銘じたくなる本作です。

（文／森山梓）