何もかにもパンク過ぎ。『全身ハードコア GGアリン』
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「狂っている」という言葉では収まり切らない変態っぷり。違法なおクスリを存分に堪能し、そのまま永眠したパンクロッカー、GGアリンが永眠するまでに迫ったのドキュメンタリー。パンクロックを標榜するバンドがいくつあるか知らないが、彼より洒落にならない人間はいないだろう。
全裸になったり自傷行為に走った上、自らの糞便を観客や自身に塗りたくる(その結果、敗血症に罹患)。あとは観客をブン殴る。
上記に類した行為をするパンクバンドはいくらでもいるが、考え得る最悪の斜め上を突き進む。間違っても家族と食卓囲んで視聴できる映画じゃない。その日の晩御飯がカレーなら視聴は厳禁。その日からカレーを食べられなくなる阿鼻叫喚の地獄絵図へと化す。ファンやホラー好き以外は視聴を避けること。
バンドマンのドキュメンタリーなので当然ライブを行う。クスリのキメ過ぎなのかどうか、同胞の米国人に映画を見せたら「歌詞を全く聞き取れない。これ本当に英語なの?」と唖然。ボーカル担当なのに......。やはり、クスリはダメ、絶対。
狂気とも取れるライブの合間にアリンのインタビューが出てくる。そして、その一つひとつが心に刺さる。
「人間は物を抱え過ぎて動けない」「家は人間を縛り付ける」等々、ジャンキーとは思えぬ人間観を披露した。
常識を蹂躙する狂人の言葉と一蹴するのは簡単だ。しかし彼の言葉は確かに真実を含んでいる。
(文/畑中雄也)