おばあちゃんの一歩踏み出す勇気が素敵。『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

　簡単なようで、意外と難しい"一歩踏み出す勇気を持つ"ということ。変わり映えのしない毎日をチェンジするのに大切なこの"勇気"だが、何かしら自分に言い訳をして、なかなか一歩を踏み出せない方も多いだろう。そんな方にぜひ観てほしいのは、おじいちゃんおばあちゃんが主役の『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』。

　イヴリンは40年連れ添ってきた夫を亡くし、ついでに発覚した夫の借金返済のため家を売却することに。そんな彼女が終の棲家に選んだ場所はインドの高級リゾートホテル"マリーゴールド・ホテル"。そしてまた、様々な事情を抱えた6人のシニアも、彼女と同じくイギリスからインドへ向かう。だが、実際のホテルは広告に出ていたのとは全然違うおんぼろ仕様。インドの人の多さや母国イギリスとはまったく違う文化に困惑しながらも、それぞれの生活をスタートさせる。

　夫任せの人生を送ってきた専業主婦歴40年のイヴリンだが、１人になってみれば意外な行動力を発揮する。インドでの生活費を稼がなければならない彼女は、自分の足で面接に行き、見事に人生初の仕事をゲット。さらに息子たちへの近況報告として、これまた人生初のブログまでスタートする。

　長く生きるほど、「初めて」に挑戦するのはどんどん怖くなる。年を重ねてきたプライドだってあるし、今さら失敗したくない。知っていること・ものに囲まれていればそれで十分なのだ。でも、異国の地でたくさんの「初めて」を重ねて行く彼女の行動は、そんな風に不安で一歩踏み出せない（踏み出したくない）人に勇気を与えてくれるだろう。

　本作を観れば、きっと「生活に変化がほしい！」と思うに違いない。保守派もいいけど、たまには映画から"一歩踏み出す勇気"をもらうのも、素敵なことだと思う。

（文／アヤカ・ブルクレ）