もやもやレビュー

外見じゃなく中身を磨きたくなる『ビーストリー』

ビーストリー [DVD]
『ビーストリー [DVD]』
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 学生時代、容姿のことで他人にからかわれ、傷ついてしまった経験を持つ人は、大人になってコンプレックスを解消しようと思っても過去の記憶がよみがえり、なかなか自分に自信が持てないだろう。また、大人になってから外見重視され、大変な経験をした等「どうせ中身は評価してもらえない...。」なんて落ち込んでしまっている人にオススメなのがこの『ビーストリー』。是非一度、本来の自分の魅力を見失ってしまう前に観てほしい。

 本作はアレックス・フリンの同名ファンタジー小説がもとになった現代版『美女と野獣』。
17歳の高校生カイルはわがまま、傲慢で、ブスが大嫌いな青年。彼はその完璧なルックスから自信過剰でまるで学校の王子様のように振る舞っていた。そんな彼がいじめのターゲットに選んだのは顔にタトゥーがあり、魔女と噂されるクラスメイトのケンドラ。だがカイルの心ない仕打ちにケンドラはまったく動じない。しかも傲慢で弱いものいじめをするカイルに、ケンドラは魔法の力で内面の醜さと同等の外見に変えてしまったのだ。一年以内に外見ではなく内面を愛してくれる人を見つけることができなければ、この魔法を解くことはできず一生この醜い姿のまま生きていかなければならない。

 醜い姿を最初に見たのはカイルの父。「外見が一番重要だ」とカイル以上に思っている父は、メイドのゾラ、盲目の家庭教師ウィルと一緒にカイルを人目のつかない場所で生活させる。
また、ある事件をきっかけにクラスメイトだったリンディと一緒に生活することに。今まではクラスでも控えめのリンディの存在に全く気づいてなかったのに、リンディの無邪気さにカイルは徐々に惹かれ、リンディを振り向かせようと彼女のことを一生懸命考え、人になにかしてあげる喜びを学んでいく。

 そんな中で注目してほしいのは、盲目の家庭教師ウィルやメイドのゾラによるアドバイス。ある日の朝、カイルがウィルの部屋を覗くと、手触りだけでネクタイを選んでいた。「盲目なのにお洒落だとおかしいか?」という質問に、カイルは「やっぱり外見が一番なんだね」と反発。そんなカイルにウィルは「大切なのは『人にどう見られるかということではなく、自分がどうあるべきか』ということだよ。」と教える。こんなふうに心に刻まれるようなアドバイスが本作にはたくさん詰まっているのだ。

 「他人にどう思われているか」ということばっかり気になってしまい、本来の自分を見失ってしまう。そんな経験をしたことがある人が本作を観れば、ゾラとウィルが前向きに生きていけるヒントをたくさんくれるだろう。また、傲慢なカイルが変化し、純粋にリンディを想う姿に、人が変わるのはそんなに難しいことではないのでは?と、内面を磨きたくなるに違いない。

(文/アヤカ・ブルクレ)

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