やっぱり、映画は映画館で観よう。『僕らのミライへ逆回転』
- 『僕らのミライへ逆回転 プレミアム・エディション [DVD]』
- ジャック・ブラック,モス・デフ,ダニー・グローヴァー,ミア・ファロー,メロディー・ディアス,ミシェル・ゴンドリー
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「映画館」って、けっこう特異な場所です。わざわざ歩いて街に出かけ、そこそこ高い料金を払い、見知らぬ人たちとスクリーンを見つめる。上映している間は、身動きもあんまりとれない。こんな風に書くと、家で気軽にDVDで観る方が良く思えます。だけど、「やっぱり映画は映画館で観たい!」と心底思わせてくれるのが、『僕らのミライへ逆回転』です。
主人公の一人は、ジャック・ブラック演じるジェリー。ある日、友人で地元のレンタルビデオ屋で働いているマイク(モス・デフ)に、寝起きしているトレーラー・ハウスの隣にある発電所を襲撃しようと持ちかけます。頭がおかしいです。当然ながら断るマイクでしたが、しぶしぶついていくことに。ですが、そこでジェリーが誤って感電するハプニングが発生。それならまだしも、事故で磁気を帯びてしまった体でマイクのビデオ屋さんを訪れ、VHSのデータを片っ端からデリートするという二次災害まで誘発(VHSはテープ面に磁気のある粉を塗布したものなので、磁力にすごく弱い)。ブチ切れるマイク。窮地に追い詰められた二人は、「いっそ、俺たちでリメイク版を作っちまおう」という破天荒すぎるアイデアを実行します。
『ゴースト・バスターズ』『ラッシュアワー2』『2001年宇宙の旅』など、本作では数々の名作映画がリメイクされていきます。粗野ながら、映画愛が詰まった撮り方や演出に心躍ります(パッケージに載っている左側の不審な仮装は、ジェリーが『ロボ・コップ』を演じたもの)。なによりもグッときたのが、ラストに用意された、ある特別な映画の上映シーン。町中の人が集まり、映された物語にみんなで顔をほころばせる。あぁ、これが映画館で映画を観る醍醐味だな、と思いました。
たくさんの人が、場所と時を同じくして、一つのシーンで泣き笑いする。そこには、一人でDVDを観ていては生まれない、圧倒的な臨場感と一体感が生まれます。僕も高校時代、『THIS IS IT』という映画を渋谷の映画館に観に行った時、隣に座っていた50歳くらいのおばちゃんが、上映開始5分で号泣するという場面に出会いました。10分後、自分もつられてマイケルの勇姿に滂沱。それは、今でも「一番濃い映画体験」として残っています。自分以外の人たちと、そこで生まれた感情をシェアできること。やっぱり、映画は映画館で観るのが一番です。
(文/伊藤匠)