もやもやレビュー

頑張るおっちゃんに、勇気を貰わないわけがない。『フライ、ダディ、フライ』

フライ,ダディ,フライ [DVD]
『フライ,ダディ,フライ [DVD]』
岡田准一/堤真一
東映
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 いつからV6の岡田君は無双状態になったのでしょうか。『SP』シリーズや『図書館戦争』などで、その強さを見せつけています。最近では軍師にまで登り詰めました。そんな岡田君の武勇伝の先駆けとなった作品であり、『SP』でも共演した堤真一さん演じる中年おっちゃんの勇姿に心打たれる作品が『フライ、ダディ、フライ』です。

 平々凡々なことを自分でも認めている中年サラリーマンの鈴木一(堤真一)。そんな彼に、ひとり娘の遥が、何者かに暴力をうけ搬送されたという知らせが届きます。病院についた鈴木が目にしたのは、顔の半分を覆うほどの怪我を負った娘と、全く悪びれた様子のない、傷を負わせた犯人・石原(須藤元気)の姿でした。現役のボクシング高校チャンプでありながら、裏で姑息な悪事を働いては、有名人の親と庇護する学校の力でもみ消す石原。鈴木は復讐を誓います。翌朝、包丁をカバンに忍ばせて石原の高校に向かった彼でしたが、入ってしまったのは、近隣の落ちこぼれ高校。そして、そこで喧嘩に無類の強さを誇る男、スンシン(岡田准一)に出会います。ここから、鈴木の一夏の鍛錬の日々が幕を明けます。

 スンシンの鬼のようなトレーニングによって、着実に「石原を倒す強さ」を身につけていく鈴木のおっちゃん。肉体改造だけでなく、『燃えよドラゴン』を観るなどしてイメージ面も鍛えていくのですが、中でも心に残った修行が、通勤に使っていたバスとのガチンコ競争。スンシンのトレーニングを終えた後、毎晩、走るバスに全力で追いすがって行きます。汗まみれになりながら、自分の皮をはぎ取ろうとするかのように、競争を挑み続けるこのシーン。名作『ロッキー』のトレーニングシーンにも比肩するほど、胸が熱くなります。

 スンシンもとい、岡田君の気持ちよい強さに爽快感を覚えると同時に、自分の中の壁を超えようとする鈴木のひた向きさに、勇気を貰える本作。ブルース・リーや、スティーブン・セガールの作品(つまり、強い男が暴れまくる作品)が好きな方にも、おすすめしたい一作です。

(文/伊藤匠)

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