『ウエディング・バンケット』を観て、父親の偉大さを知る。
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最近、新聞のコラムの、親父の背中とか父親について語るみたいな特集につい涙腺が緩んでしまいます。年でしょうか。
アン・リー監督の父親三部作の2作目。
台湾人青年ウェイトンは。恋人のアメリカ人サイモンと暮らしていました。彼はゲイですが、両親にはカミングアウトしていません。そんなある日、ウェイトンの将来を案じた両親が縁談を進めてきます。むげに断ることもできず、困った二人は、ある作戦に出ます。それは、観光ビザで上海からアメリカに来ている友人女性のウェイウェイと偽装結婚をするというもの。ビザが切れそうだった彼女も、永住権を手にするために協力するのですが...。
両親を安心させるための簡単な嘘のつもりが、ひょんなことから盛大な結婚式を挙げるわ、皆から祝福されるわ、挙句の果てに子供まで授かってしまうウェイトンとウェイウェイ。意に反して、着々と親孝行ができてしまいます。
それもすごいのですが何がすごいかって、(ネタバレになってしまいますが)偽装結婚の事情や、息子がゲイだということを、実は父親が知っていたこと。それなのに、最後まで知らないふりを貫き通すのです。父とはかくも、すごいのか!
お母さんのことはよく理解しているつもりだけど、お父さんのことは正直よくわからない。だって、無口で家族に無関心じゃない? そんな風に思いがちな父親という存在。でも、裏を返せば、余計な口出しや小さな心配はせず、ドンと構える家族の精神的支柱。大事な時にかけてくれるひと言や、静かに見守ってくれる心遣いにはっとさせられたこと、あなたにもあるんじゃないでしょうか。
加齢臭をかぎとってしまっても、お酒臭い夜があっても、髪の毛が薄くなってきても、邪険にするのはもうやめよう。父親の存在について、その有難さについて考え直すことができる一本です。
(文/森山梓)