もやもやレビュー

あらんかぎりの「作り込みと遊び心」に感服。『LEGO®ムービー』

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 本作を一言で表すなら「ガチ」になります。ストーリーやキャラ造形はもちろんのこと、なによりも凄まじいのは「レゴ」の世界を、文字通り「レゴ」のみで表現しきっていることです。

 主人公は、どこにでもいそうな普通な作業員のレゴキャラ、エメット。朝起きて、まず確認するのは、レゴの説明書のようなマニュアル。「笑顔であいさつする!」「音楽をきく!」とか、ものすごく平凡なことがリスト化されています(スタバらしきお店で「バカ高いコーヒーを飲む!」というものも。値段は一杯3500円)。そんな彼が、ある日「選ばれし者」として世界を救う役目をまかされたことから、ストーリーはめまぐるしく展開し始めます。

 この作品の白眉は、唖然とするほどの「やり込み魂」です。なにしろ、工事現場での解体の時に起きる爆発の煙や大海を、波しぶきまで含め、レゴのみで表現。尋常でないレベルの作り込みです。表現の仕方に留まらず、ストーリーを通して「レゴで遊ぶということはどういうことなのか?」というテーマを詰め切っていると感じました。

 思い返すと小学生の頃、放課後に遊びに行っていた学童センターで、我先にとレゴ遊びに燃えていました。やっとの思いで組み立てた不格好な城とお店にあふれた町。そこに、近くで遊んでいた奴らのボールが飛来し、城がデストロイ。大戦が勃発しました。本気でケンカするほど、限られたもので「自分がイメージした世界」を作ることに夢中だったんだと思います。本作が届ける沢山のメッセージのうちの一つは、そういった頃の、なんの頓着もない遊び心の大切さです。それは子供であろうと大人であろうと、関係ないモノのはず。その証拠に、この作品は作り手たちの遊び心に溢れかえっています。

 そのほか、小ネタも超大盛り。キャラの一人として登場するバットマンが特にツボです。自己紹介テーマ曲を大音量でまきちらしたり、シンプルにとてもウザい(しかも歌詞が「ダ~クネ~ス」「孤独~」「超リッチ~」とか、そのまんま)。『ハリー・ポッター』のダンブルドアと『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフのレゴキャラ二人に対しては、「おまえら見分けつかねぇよ」的になじったり。的確ないじりに愛情を感じます。とにもかくにも、五歳児からおっちゃんまで、絶対的におすすめできる一作です!

(文/伊藤匠)

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