もやもやレビュー

手に負えない力の魔力と恐ろしさ。『クロニクル』

クロニクル [Blu-ray]
『クロニクル [Blu-ray]』
デイン・デハーン,アレックス・ラッセル,マイケル・B・ジョーダン,ジョシュ・トランク
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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 不安定で、何も出来なさ加減に落ち込んで、自分自身を持て余している。高校生の頃って、そういう年代だと思います。本作は、そんなグレーな時期に、余りに大き過ぎる力を手にしてしまった青年の物語です。
 
 主人公は、内気な高校生のアンドリュー。昨年プラダの広告モデルにも抜擢されたデイン・デハーンが演じます。学校ではイケイケなやつにいじめられ、家では飲んだくれの父親に悩む生活。そんな中、ある出来事によって従兄弟のマットと、学園の人気者スティーブと共に超能力を得ます。念じただけで物や人を動かすことができる能力、いわゆるサイコキネシスです。

 こういう展開、少年心をくすぐられます。いきなり得てしまった能力をどう活用していくのか。予想通り、最初のうちは女学生のパンツをめくったり、いたずら程度にウヒャウヒャ言いながら力を使っていた三人。ですが、徐々に能力をコントロール下におき、パワーが高まっていく中で、暴走の兆しが芽生え始めます。

 自分の手に負えないような能力を手にしてしまった三人。中でも、そのパワーにズブズブと溺れて行ってしまうのがアンドリューです。原因は失恋であったり、家族との上手くいかないコミュニーケーションであったりと、ものすごく共感できるもの。わだかまりは絶大な能力によって、文字通り、爆発していきます。高校生というアンバランス極まりない時期に自在に全てを動かせる能力があったら、私だって校舎のひとつやふたつ、ぶっ潰していたに違いありません。

 アンドリューが囚われたものは、中二病なんて言葉で括ってしまうには抵抗のある、「力への過信」です。自分があやふやな時、自分の能力とは関係ない力に溺れてしまうというのは、私たちにも起きやすい状況のはず。先日起きた「YouTube」に投稿された異物混入事件などは、「拡散と注目を集められる力」に溺れてしまったのが一因かも。10代後半の灰色さを写しとりながら、SFとしてのワクドキ感もきっちり押さえられた作品です。おすすめです。

(文/伊藤匠)

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