『WOOD JOB! 〜神去りなあなあ日常〜』に学ぶ、日々の気長な心持ち。
- 『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ DVDスタンダード・エディション』
- 染谷将太,長澤まさみ,伊藤英明,優香,西田尚美,マキタスポーツ,有福正志,近藤芳正,光石 研,柄本 明,矢口史靖
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「なあなあだな」
最近いらっとした時に、しばしばこの言葉を頭に浮かべます。電車で席を取ろうと、進撃してきたおばちゃんにタックルされた時とか。この言葉を教えてくれたのが『WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜』です。
主人公の平野勇気(染谷将太)は、受験に失敗し、彼女にも振られるというダブルパンチをくらいます。落胆しきった勇気は、たまたま出会った林業研修のポスター(表紙に美人な女性が載っている)に釣られ、山奥の研修センターへ。ですが、そんな甘い根性が通じるはずもなく、すぐにリタイアしかけます。深夜に逃亡をはかろうとした時に出会ったのが、きっかけとなったパンフの表紙に載っていた美女、直紀(長澤まさみ)。中途半端な気持ちで来たことを言い当てられた勇気は、こんちくしょうという気持ちと彼女への興味から、林業研修にくらいついていきます。
『スウィングガールズ』『ハッピーフライト』など、「ひとつのものに打ち込む人たちの熱い姿と、ちょっとズレた可笑しさ」で、笑いとドラマを生み出してきた矢口史靖監督。その手腕は、本作でもいかんなく発揮されています。特にヤバいのが、勇気の兄貴分のヨキ(伊藤英明)。粗野で荒々しい山男っぷりは、海上自衛隊やサイコパスな先生以上のハマり役です。また、一瞬だれだか分からないほど、林業のおっちゃん役として馴染んでいるマキタスポーツさんも必見です。
コメディ要素をちりばめながら、先祖から次の世代へと受けわたしていく林業のお仕事の姿を映していく本作。豪快なラスト、暖かみのあるエピローグを観たあとは、時間の持ち方が広く、伸びやかになるはずです。新年初映画にもおすすめです。
(文/伊藤匠)