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バナナマン日村さん似の彼が教えてくれる、言葉より大切なこと。『フォロー・ミー』

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舞台は70年代はじめのロンドン。アメリカからやって来たヒッピーガール・べリンダは、上流階級の会計士・チャールズと出会い、恋に落ちます。しかし結婚後、ふたりの心はすれ違うばかり。

妻の浮気を疑ったチャールズは探偵を雇い、べリンダを尾行させるのですが...この探偵・クリストファルーが尾行がめっちゃヘタ。大体、どこに行っても誰より目立つ全身まっ白の服装で、常にお菓子(「マカルーン」とヨーグルトがお気に入り)をもぐもぐ食べているし、動物園のイルカショーでは一人だけ前に出て水槽に近づき、びしょ濡れになってみんなに笑われる始末。そんな訳で彼の存在はべリンダにもバレバレなのですが、彼女は憎めないキャラクターの彼が自分の行く先にどこまでもついてくるのがやがて楽しくなってきます。

そしていつしかふたりの役割は逆転し、今度はクリストファルーが歩く後ろをべリンダが付いて回り、ロンドン観光する格好に(この辺りからひょうきんでかわいらしいクリストファルーがだんだんバナナマンの日村さんに見えてきます)。べリンダに存在がバレていても、彼は一応、尾行中の探偵。決して言葉はかけません。無言のうちにふたりは楽しい時間を共有し、どんどん打ち解けていきます。一方の堅物夫・チャールズはなんでも言葉と知識で塗り固めてしまい、世界を、芸術を、シンプルに味わうこと、感じることを妨げられたべリンダは、少々疲れていたのです。

クリストファルーとの不思議な無言デートを重ね、心が生き返ったべリンダ。クリストファルーもそれは同じ。「ゆっくりと長い沈黙の底にいるうちに すばらしい音が聞こえてきた 自分の感情が 沸き立つ音が」というセリフにそれが表れています。少ない線で表現されているのに驚くほど多くの感情を浮かび上がらせる絵画や、旋律だけで行ったことのない遠い国や時代へ連れて行ってくれる音楽のように、言葉なんてない方が、私たちはよほど豊かに物事を味わうことができると、ふたりは教えてくれます。

果たしてべリンダは、鼻につくインテリうんちく野郎・チャールズの元に戻ってしまうのか? そこで日村さん、いえクリストファルーが取る行動がまた粋なのであります。
(文/小野好美)

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