記録に残すものと、記憶に焼きつけるもの。『LIFE!』
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- ベン・スティラー,クリステン・ウィグ,シャーリー・マクレーン,アダム・スコット,ショーン・ペン,ベン・スティラー
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スマホを持ってから、写真を撮ることが、ものすごく身近になっています。赤い夕日。商店街のへんな看板。友達のぶさいくな寝顔。隙あらばパシャパシャ撮ってしまいます。そんな「撮ること」について考えるきっかけになったのが『LIFE!』です。
電子版への移行により廃刊、大規模なリストラが決まった雑誌「LIFE」の本社。編集部で写真のネガ管理を長年担当していた42歳のウォルター(ベン・スティラー)は、最終号の表紙をかざる写真のネガを求めて、フォトジャーナリストで冒険家のショーン(ショーン・ペン)を探す旅へと出発します。内気で妄想ばかりをしていたウォルターは、その道中でバリバリと進化。酔っぱらいのパイロットが操縦するヘリから海上の船へとダイブしたり、アイスランドの峡谷の道をスケボーで滑走したりと、ウォルター自身、考えもしなかった冒険をこなします。そんな旅の中で映される雄大な絶景の数々も、この映画の魅力に一役かっています。
紆余曲折を経た物語の後半、ウォルターは、ユキヒョウを撮るためにアフガニスタンへと飛んだ、ショーンのもとへたどり着きます。2人で話しながらチャンスを待っていると、ふいに現れたユキヒョウ。にもかかわらず、シャッターを切ろうとしないショーン。「撮らないのか?」とたずねるウォルターに、彼はこう答えます。
「もしその瞬間が俺にとって好きな瞬間なら、カメラに邪魔されたくない。その一瞬を大切に味わう」。
撮ることではなく、自分の目だけに焼きつけることを選んだショーンの言葉に、「残すこと」へのヒントをもらいました。写真として一瞬をきりとったものは、時間の影響を受けることなく、画を変えないまま残りつづけます。逆に、自分の記憶の中だけにしまったものは、しだいにボヤけながらも、その存在を濃くしていきます(忘れられない映画のワンシーンなども、それに近いかも)。
では、記憶という素敵な能力を持ちながらも、なぜ私たちは記録を残すのか。それは他の誰かや、未来の自分という他人のため。本作のラストは、その意味も鮮やかにつたえてくれます。一年の映画納めの1本としても、おすすめの一作です。
(文/伊藤匠)