もやもやレビュー

『謝罪の王様』を観て、「謝る」というコミュニケーションについて考えた。

謝罪の王様 [DVD]
『謝罪の王様 [DVD]』
阿部サダヲ,井上真央,竹野内豊,岡田将生,水田伸生
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 意地を張ってなかなか謝れなかったり、プライドが邪魔してすみませんの一言が言えない人におススメしたい作品です。

 主人公は、東京謝罪センター所長で、「謝罪師」を生業とする黒島譲(阿部サダヲ)。様々な事件を持ち込む依頼人の難題を、謝罪のテクニックを駆使して解決します。

 例えば、ヤクザの車と追突事故を起こした倉持典子(井上真央)。黒島は事前に顔面血だらけにして組事務所に行って土下座で謝り倒し、多額の賠償金を免れます。

 ほかにも、同僚にセクハラしまくり、訴えられてしまった下着メーカー社員(岡田将生)や、大物俳優とその元妻の大物女優の謝罪会見などで、様々な謝罪テクを駆使する黒島。
 
 でも、そんな"謝罪のプロ"の仕事を通して感じるのは、大事なのは「テクニック」ではなく、相手に本気で謝りたいと思う気持ちなのだということです。そして何より、「謝る」という行為を通じたコミュニケーションって、実は素敵なものなんだって、気付かせてくれる。

 日本では「すみません」という言葉がよく使われます。迷惑をかけて「すみません」、声をかける時も「すみません」、感謝の気持ちを伝える時にだって「すみません」。本来マイナスの響きを持つはずの「すみません」という言葉、その裏側にはお互いを思いやる気持ちが、いっぱいに込められています。謝罪しながら感謝する......そんな日本人ならではのコミュニケーションが「すみません」には詰まっているのです。

(文/森山梓)

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