『横道世之介』に学ぶ、記録より記憶に残る生き方。
- 『横道世之介 [DVD]』
- 高良健吾,吉高由里子,池松壮亮,沖田修一
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『パレード』や『悪人』などの吉田修一さんの原作を、『南国料理人』『キツツキと雨』などの沖田修一さんが監督した『横道世之介』。長崎から大学進学を機に上京した横道世之介(高良健吾)の、様々な出会いが描かれます。
印象的なのは、世之介のいない16年後の世界。彼と出会った人々が、彼との日々を回想するのですが、その誰もが嬉しそうに、思わず笑顔になってしまうんです。
恋人を妊娠させ大学を辞めることになった友人(池松荘亮)に、いともさらりとお金を貸してあげたこと。
心配をかけたくないからと、ケガで入院したことを隠していた彼女(吉高由里子)に、「心配し合うことが仕事だから心配させてくれよ」なんて、優しくて粋な言葉をかけたこと。
実は同性愛者だと打ち明けてきた友人(綾野剛)を、これまでと何も変わらずすんなりと受け入れたこと。
こんな風に、誰に対しても、愛と思いやりを持って接する世之介。
特に、前述の綾野剛演じる友人・加藤が語った言葉は、世之介がもたらした影響のすごさを物語っていました。
「世之介と出会えた自分は出会えなかった他の人生よりも少しだけ幸せなのではないか」
マイペースで鈍感でちょっとズレてるけど、自然体で愛嬌たっぷりの世之介。空気なんか読めなくとも、大事なとき、自然に相手の心に寄り添ってあげられる、ほんとの優しさを持っています。
半径5mを幸せにできる人生も、いいもんです。
「有名になるぞ!」......子どもの頃のそんな夢が叶わなかった大人に観て欲しい映画です。
(文/森山梓)