【80年代特集!】嫉妬と執着は身を滅ぼす。『レイジング・ブル』
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- ロバート・デ・ニーロ,キャシー・モリアーティ,ジョー・ペシ,マーティン・スコセッシ
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良くないとわかっていても、わきあがってくる嫉妬の感情。あまりいきすぎると......。嫉妬という感情ひとつが、才能も幸せも全部食い尽くす。『レイジング・ブル』が戒めになります。
1940〜50年代に活躍した実在のボクサー、ジェイク・ラモッタの自伝をもとにした、スコセッシのボクシング映画。公開は1980年ですが、モノクロが主流だった40年代を投影し、モノクロ映画となっています(一部カラーもあり)。
ボクシングの才能に恵まれたラモッタは、"ブロンクスの怒れる牡牛(レイジング・ブル)"と恐れられる存在。若いブロンド美女と再婚し、伝説のボクサーとして今日も語り継がれるシュガー・レイ・ロビンソンに初黒星をつけ、遂にはミドル級世界チャンピオンにまで上り詰めます。しかし、タイトル獲得後は一気に転落の人生。不摂生しまくって醜い肥満になり、もともと嫉妬深い性格がさらにエスカレート。マネージャーとして尽くしてくれた実弟と若妻の浮気まで疑い、DVも発動。弟にも若妻にも愛想を尽かされ、いろいろあって刑務所も経験したラモッタは、場末のバーのコメディアンになります。
溢れる才能を持ち合わせながらも、ラモッタが転落の道をたどった大きな要因は、若妻への異常な嫉妬と執着心。愛だったものが単なる所有欲になってしまったことは、彼女をモノ扱いするような言動に表れています。結局、嫉妬って、相手を想う気持ちから生まれてくるわけじゃないのかもしれません。それなのに、愛の延長線上にあるもののように思えてしまうのも厄介なわけで。身勝手な嫉妬や執着にとらわれそうになったら、エスカレートする前に『レイジング・ブル』が効きそうです。
(文/鬱川クリスティーン)