熟年夫婦に学ぶ、格好良い別れ方。『ナビィの恋』
- 『ナビィの恋 [Blu-ray]』
- 西田尚美,村上 淳,登川誠仁,平良とみ,中江裕司
- バンダイビジュアル
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青い海、豊かな自然、沖縄の音楽がとても魅力的に描かれている本作。粟国島で暮らすおばぁ・ナビィ(平良とみ)とおじぃ・恵達(登川誠仁)のもとに、島を出た孫の奈々子(西田尚美)が里帰りします。と同時に、ナビィの60年前の恋人・サンラーも帰ってきていたのでした。
当時、19歳だったナビィは、親やユタ(先祖や神々の霊と言葉を交わす霊能力を持った女性)からの反対を受け、サンラーと別れさせられた上に、サンラーは島から追放させられます。迎えにくるという彼の言葉に、ナビィは「待っています」......と悲しい別れをしたのでした。
そして60年越しでサンラーとの再会を遂げた彼女は、長年連れ添ったおじぃ、「おばぁ、おばぁ」と自分を慕ってくれる孫娘ともあっさり別れます。
一方のおじぃも、愛する嫁が元カレのところへ行ってしまうことを薄々知りながらも、そのことを尋ねたり引き留めることもしません。しかも、別れを予想する朝に、おばぁの身体を気遣う言葉までかけてあげます。
こんな一生の一大事を、さらりとやっちゃうって超すごいです。腹が据わっているとはこのこと。二人の潔い腹のくくり具合に感嘆しまくりでした。これって年の功なのでしょうか。いや、それだけではないはず。
長い間一緒に生活を共にし、昔から知っている同郷の者同士、目には見えない厚い絆で結ばれた信頼関係があるからこそ、言葉なくともなされたのではないでしょうか。ナビィが最後に選んだ相手はおじぃではなかったけど、おじぃならわかってくれる、受け入れてくれると思ったのだろうし、きっとおじぃもナビィのことや自分への想いも理解していたからこそ納得して受け入れたんだと思います。
ちなみに、おじぃ役の登川誠仁さんは演技経験のない三線の第一人者だそう。ふたりの素朴で温かみのある夫婦像に、沖縄民謡やのどかな風景にと、とってもいい感じに陽気に素敵に描かれています。
(文/森山梓)