記憶喪失になるほど、チャン・ツィーが美しい。『グランド・マスター』
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- トニー・レオン,チャン・ツィイー,チャン・チェン,マックス・チャン,ソン・ヘギョ,ウォン・カーウァイ
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年賀状が家族からしか来ませんでした。2014年も絶好調です。
香港の巨匠ウォン・カーウァイが初めて撮った、カンフー・アクション映画『グランド・マスター』。ウォン・カーウァイとは何度もタッグを組んできたトニー・レオンが"ブルース・リー唯一の師匠"として知られるイップ・マン(葉問)を演じる実話をもとにした物語ですが、実質の主役は女流カンフー・マスター、ルオ・メイです。あのチャン・ツィーが演じているんですが、彼女がもう美しすぎて死にたくなります(嘘です。慢性的に友達がいないから死にたかっただけです)。ウォン・カーウァイは、チャン・ツィーを美しく撮ることに相当命がけだったんじゃないか! そう思います。
最もその美しさに驚かされたのは、ルオ・メイが実は密かにイップ・マンを慕っていたことを告白するシーンです。ウォン・カーウァイにかかると、カンフー映画にすら『花様年華』的な大人のモワッとした恋の薫り("香り"ではなく!薫製みたいな濃厚な匂い)が漂ってしまう衝撃。アンド、ルオ・メイが美しすぎて何言ってるのか全然頭に入って来ない衝撃!
真っ赤に染まった唇を追い、白すぎる透明な肌を見つめ、均整のとれた全体像に目を奪われ、その時間を永遠のように感じていると、言葉を理解する脳機能が完全にフリーズしてしまいます。かつて「女子アナウンサーの外見が魅力的であればあるほど、そのアナウンサーが読み上げたことは男性の記憶に残らない」という研究発表がありましたが、美しさが度を超すと女性までもがこの現象にハマッてしまうようです。
というわけで、チャン・ツィーの美しさに身もだえてしまう本作ですが、カンフー・アクションも独特でカッコいいです。サモ・ハンがアクション監督を務めたドニー・イェン版の『イップ・マン』はいわゆるリズミカルで軽快で気持ちいいカンフー!が楽しめましたが、こちらの方は一発一発の重みと映像美で魅せるマトリックス的な匂いのモダンなカンフーです。特に雨の中でのカンフー・シーンが素晴らしいです。
(文/鬱川クリスティーン)