もやもやレビュー

挫折だらけでボロボロになった人へ『マネーボール』

マネーボール [DVD]
『マネーボール [DVD]』
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> LawsonHMV

 挫折ほど慣れないものはないです。それまでの自分を否定され、音がなるほどボキボキに折れた精神。これを元に戻すのは、本当に苦労のかかる所業です。
 本作の主人公ビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は過去の深い挫折に苦しみながらも懸命に戦い続ける、ものすごく諦めの悪い男です。
 
 アメリカに実在する球団オークランド・アスレチックスは資金難に苦しむ弱小球団。チームのGMであるビリー(こちらも実在)はチームを蘇らせるため、「マネーボール理論」(打率や打点数ではなく「出塁率」が高い選手に重きをおく異色の理論)という策を取る決断をします。チーム内の保守的なスカウトマンや監督、狂人のように罵倒するマスコミと戦いながら、チームをリーグ優勝へと導くべく戦いを挑むビリー。そんな彼は、元々は高校卒業と同時にニューヨークメッツから1位指名された花形選手だった過去を持っています。しかし荒い気性も災いして、全く成績を出せないまま現役を引退。9年間の現役時代に打った本塁打の数は、わずか3本だったそうです。

 暗鬱とした時代を経て、スカウトマンとしての第二の人生をスタートさせた後も、自分を苦しめ続ける選手時代の大きな挫折。それを引きずりながらも、目の前の試合へと未知の理論を武器に立ち向かうビリーの姿は、「戦う男」そのもの。葛藤を抱えながら挑み続ける彼の勇姿に、痛いほど胸が熱くなりました。

 書いている私自身も大学受験の失敗や度重なる失恋など、自分にとっては身を切るような失敗の記憶に未だに苦しむことが多々。「あの時、ああしていれば」と、今と違う未来を想像して絶望する。どんな人も、一度は経験したことがある地獄ではないでしょうか。
 背負っていくしかない挫折感に心折れそうな時。過去がもたらしてしまった現状から目を背けたくなる時。同じ感情に苦しみ抜いている男が、この映画にはいます。

(文/伊藤匠)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム