何の目的もない日々だって、無駄じゃないんだと思う『横道世之介』
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無計画に一日が終わっていることがあります。早朝にがばっと起きて散歩に行ったり、夕方に急に寂しくなって映画館に引きこもりに行ったり。「あれ、おれ何やってたんだろ」と後から思うやつです。『横道世之介』で描かれる大学生活の情景は、そんな無軌道だけれど、人生の中でものすごく輝いている日々なんじゃないかと思います。
1987年、大学進学のために東京へと上京してきた横道世之介。ストーリーは世之介が大学1年生だった1987年の1年間、その16年後に友人たちが彼との思い出を回想する2003年、2つの時代が交錯しながら展開していきます。狂乱のようなサークルの新歓期、バイト先や教習所での偶然の出会い、恋人とのささやかなクリスマス。彼との時間を懐古する人たちの表情は、どれもが優しさと温かみに満ちたもので、自分にも世之介という友人がいたかのような幸福感を味わえます。
偶発的に出会った人たちみんなに幸せな思い出を残していく世之介。そんな彼の大学生活は非常に無為で無目的。だけどそんな日々を通して、「目的も目標も決めずに過ごした日々は、決して無駄なものではない」ということを教えてくれます。大学時代のように自分の気分の赴くままに動ける時期なんて、人生の中では本当に一瞬のこと。だからこそ、後で何回も思い出してしまう大切なものになるんだと思います。
筆者を含め、大学生活の大半を無計画に過ごしてきてしまったという人は沢山いるかと思います。そんな人にこそ、見て欲しい作品です。きっと何かが救われるはずです!
(文/伊藤匠)