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「倍返し!」の使い方にはご注意を!『ソーシャル・ネットワーク』

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 ある有名なバンカーが雄叫びまくっていたこの言葉。今年の流行語大賞の筆頭候補にもなっています。バイタリティーに満ちた男気溢れる台詞ですが、根っこに存在するのは明確な相手への復讐心。そんな負の感情を持った言葉の使い方に気をつけようと思ったのは、デヴィット・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』を観たためです。

 Facebookの開発者であるマーク・ザッカーバーグ氏の青春期の鬱屈と迷走が映されている本作。今では五億人以上の利用者数をほこるFacebookですが、その元となったのはマークが彼女に振られた腹いせに一晩で作り上げた「Face mash」というハーバードの女学生の容姿格付けサイト。自分を否定した彼女への「復讐心」が世界規模のSNSの原型を作ったわけです。そしてご存知の通り、Facebookは大流行。マークは莫大な富と名声を手に入れることとなったわけですが、一つ引っかかったのは、最初にマークを突き動かした「彼女を見返してやろう!」という思いは成就したのかということです。

 以下ネタバレとなってしまうのですが、ラストシーンの元カノへの友達申請と繰り返しページ更新をする所に見られるように、マークの彼女に対する思いは最後まで消えなかったよう。自らが作りだしたコミュニティは「人を繋ぐもの」なのに、自分が追い求めたパトーナーとは繋がれない......なんとも皮肉な結末です。妬みや嫉み、そして復讐心というマイナスな感情は、確かに自分の大きなエネルギー源となるものです。僕自身、文章を書くエネルギーはそういった暗い所からもらうことも多いです。ただ、ブラックな感情に支配されて目的を見失うのは本末転倒。「倍返し」が無駄にならないためにも、方向性のチェックは大切です!

(文/伊藤匠)

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