ずるい奴は生き残れないなんて、誰が決めた。『グッドフェローズ』
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- ロバート・デ・ニーロ,レイ・リオッタ,ジョー・ペシ,マーティン・スコセッシ
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誕生日だったのに、ズボンのチャックが開いていました。残念です。マーティン・スコセッシ1990年の名作『グッドフェローズ』を観ました。
マフィアに憧れる少年・ヘンリーが、やがてマフィアの一員となりその世界の中で生き抜く様を描いた、実話を元にした作品です。「ちんけな仕事をしてちんけな給料をもらってる奴らは腑抜け」とか「普通にやってても多くは稼げない」というのがヘンリーの持論です。世の中って実際、そういうもんなんだろうなと、爆音で走るフェラーリを遠い目で見つめながら思っています。
ズルして金儲けし、列には決して並ばないし、面倒な奴は殴るか殺す......。社会的に悪とされていることを平気でやるマフィアたちにも正義があります。秩序を乱してはいけない(乱した奴は死。乱しそうな奴も死)、ファミリー同士の付き合いを大切にする、絶対に仲間を売らない、そして離婚は絶対ダメ! どれもこれもごもっともです。悪いのか正しいのかわからないのが、マフィアの魅力。ダークヒーローの魅力、な、はずでしたが、ヘンリーは違います。
列にも並ばないけど仲間も裏切る。悪いことをして金儲けするけど、離婚もしたがる。両方をうまいことやってのけ、狡猾にサバイブする食えないマフィアなのです。最後に笑うのは、正義でも悪でもなく、小ずるい奴。そんな理不尽さは胸くそ悪くも、世の中ってそういうものなんだろうなって、車高の低すぎるポルシェを眺めながら思う晩秋です。
(文/鬱川クリスティーン)